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太陽と海の教室

太陽と海の教室

Episode 1
『地球一熱い教師が海からやってキター!!』

有名国立大学、私立大学に毎年多数の生徒を合格させる進学高校、
湘南学館。
この高校に、櫻井朔太郎(織田裕二)が赴任してくる。
しかし、櫻井は誰もが想像するような進学校の教師とは、
およそかけ離れた型破りな男で…。


夏を目の前にした3年1組の仲間、根岸洋貴(岡田将生)、白崎凛久(北乃きい)、
田幡八朗(濱田岳)、屋嶋灯里(吉高由里子)、楠木大和(冨浦智嗣)、
日垣茂市(鍵本輝)、澤水羽菜(谷村美月)たちは、
夜の浜辺に集い、自分たちだけの卒業式をしようと花火を楽しむ。

花火に火をつけ、それぞれ携帯で自分たちの写真を撮る7人。
「高校卒業、おめでとうー!!」
7人の後ろに大きな打ち上げ花火が上がる。

携帯カメラで撮った写真には、自分と、隣に並んだ人しか入っていない。
「全然撮れてないじゃん!!」と凛久。
「撮りなおし!みんな整列整列!」と大和。
「待って!来て!」
羽菜に言われ、携帯を並べてみる。
すると、7人全員の記念写真が出来上がる。


「まあ・・いっか、これで。」と洋貴。
「うん!
 これが私達の卒業写真。」と凛久。
「この7人で遊ぶのも今日が最後か。」と灯里。
「いやでも、明日水泳部の対抗戦があるんだけど。」と洋貴。
「そうだよ!みんなで応援に。」と茂市。
「約束したでしょ。
 夏になる前に、私達だけで卒業式しようってさ。」と灯里。
「今日で高校生終わりだよ。」と大和。
「明日からは受験生。」と凛久。
「わかったよ。
 ほんと冷てー友達だよな。」と洋貴。
「ほんとだよな。」と茂市。
7人は空に上がる花火を見つめ・・。

帰り道
「じゃあ俺、コイツ(サーフボード)捨ててくるわ。」と茂市。
「バイバイ!」
「じゃあ私もそろそろ帰る。」と灯里。
「彼氏?」と凛久。
「エヘヘ。ちょっと、送ってって。」灯里が八朗に言う。
「はい!」と八朗。
「バイバーイ!」
「じゃあ、」と羽菜。
「僕達も。」と大和。
「何々?今日はラブホか?」と洋貴。
「慶應の模試申し込んだ?」洋貴を無視して羽菜が大和に聞く。
「もち!あと、一ツ橋と、東大と、」と大和。
「シカトか!?ほんと色気ねーな。
 たまには勉強以外の会話しろっつーの!バカチン!!」

凛久と洋貴が並んで歩く。
「うちのクラスさ、産休のヨシミネ先生に代わって、」と凛久。
「ミス東大が来るんだろ!もう、どうすんだよ!」
「なんか浮ついてるし。そんなんじゃ同じ大学行けないじゃん。」
「わかってるって。
 明日で部活は引退する。」

「ねーぎーしー君!」他校の生徒が洋貴を呼び止める。
「・・・」
「西高の子?」と凛久。
「ああ・・末吉。」
「海開きの祭り行ったらやきそば超並んでんの。ウザくね?」
中心人物の末吉春臣(中村倫也)が洋貴に言う。
「・・そうなんだ。」
「根岸焼きそば買ってきて。」
「・・・」
「洋貴・・。」凛久が心配する。
「わかった。」
「そういやお前、アンカーなんだって?」
「・・・」
「うちの学校の水泳部との対抗戦だよ。
 今年はお前の活躍次第で湘南学館が勝つかもしれない。」
「それがどうかした?」
「負けてくんないかな。わざと。」
「・・・」
「負けちゃえよ。その方がお前には似合ってるよ。」
「・・・わかった。」
手を差し伸べる末吉。それに握手で答えようとする洋貴。
「誰が握手しろって言った?
 お手だよお手!」
「・・・」
「何その顔。いいのかなー。
 またお前んちの親父土下座することになっちゃうかもよ。
 こいつんちの親父借金返せなくてうちの親に土下座したんだよ。
 キツくね?
 親の土下座なんか見たくなくね?
 ほら、ひざまずいて、お手!」
「・・・」
屈辱に耐えながら、ひざまずき、お手をする洋貴。
笑いながら写真を撮る末吉の友達。
「負け犬!
 ほらやきそば!ダッシュで!」
悔しそうにやきそばを買いに行く洋貴。
そんな洋貴を凛久は見つめ・・。

翌朝
登校途中の凛久は、海岸を走る水泳部に声をかける。
「おはよう!」
一番後ろを走る洋貴と並ぶ凛久。
「おはよう!良かった。ちゃんと練習してるんだ。
 昨日あんなことあったから。」
慌てて凛久を止め、みんなに先に行くよう言う洋貴。
「お前余計なこと言うなよ。」
「え・・洋貴まさか最後の試合だっていうのにわざと負ける気?」
「お前には関係ないよ。」
「ねえ、洋貴のお父さんの工場が、末吉君のお父さんの会社の下請けだったの?」
「誰にもしゃべんな!
 しゃべったら一生許さない。」
「・・・うん。」

「誰かー!!孫が!孫たちが海に!!」
孫の名前を叫ぶ老人。子供が波にさらわれたらしい。
洋貴が靴を脱いで助けに行こうとする。
「ちょっと大丈夫!?」と凛久。
「俺が溺れたら次はお前だから!」
「は?ちょ・・
 !!ちょっと待って!」
「は?」
「あれ!・・・あれ!!」
子ども二人を担いだ男が波間から顔を出す。
荒波にもまれながら、その男は子供2人を無事救出。
この男こそ、櫻井朔太郎(織田裕二)だった。

朔太郎の指示で、洋貴は救急車を呼び、凛久は子どもの一人に人工呼吸を施す。
幸い二人とも命を取り留めることが出来た。
ライフセーバーが子どもたちを運んでいく。

「お医者さん?」凛久が洋貴に聞く。
「・・・わかんない。」

「あ・・」
スーツ姿のまま海に飛び込んだその男。
胸から海草まみれの携帯を取り出し、
「またやった・・。」と呟く。
水浸しのカバンと、落ちていた手帳を拾う朔太郎。
手帳は、凛久の学生証だった。
「すみません。」凛久が受け取る。
「何時だ?」
「8時です。」
「8時!?
 どこにある!?」
「どこ?携帯屋さん?」
「違う。連れてってくれ!」
朔太郎は凛久の手を取り走り出す。

走る二人を追いかける洋貴。
「おい待て!何してるんだよ。」洋貴が二人に追いつく。
「道に迷った。」
「そりゃそうだよ。
 どっから来たんだよ。」
「どっから来たかは大事じゃない。
 どこへ行くかが大事なんだ。」
「じゃあ行けばいいじゃないですか。」と凛久。
「あ、聞いてみる。ちょっと貸してくれ。」
洋貴の携帯を借りる朔太郎。
「あれ、なんかメール来た・・。」
それは、昨晩、末吉の友人が撮った、お手の写真・・。
『負け犬』と言葉が添えられている。
「何でお手してんの?」
携帯を奪い返す洋貴。
「・・・」
「良かったら、俺に相談してみろ。」
「何なんだよあんた・・。」
「いや何なんだよって?」
「誰だって聞いてんの!」
「誰だ?
 難しい質問だな。」
「どこが難しいんだよ。」
「いや、でも、いい質問だよ。
 自分が誰なのかを証明するのは難しい。
 でもお前たちがそう言うんなら考えてみよう。」
「何ワケわかんないこと言ってんだよ。
 名前を言えばいいんだよ、名前を!」
「鈴木一郎。」
「鈴木一郎・・」
「そんな嘘の名前言われたとしてもだ。」
「嘘なのかよ!」
「名前聞いて俺の何がわかる?
 ああ鈴木さんかってそれだけだろ。」
「じゃあ職業言えばいいじゃない。」と凛久。
「職業ね!一理ある。
 でも職業だけでその人は信用できるか?
 悪い警官もいるし心優しい海賊や泥棒だっているだろ?」
「ジャックスパロー!」と凛久。
「ルパン三世!」と洋貴。
「そう!
 例えお前たちが大統領夫妻だとしてもだ。」
「普通に高校生です!」
「良い高校生か悪い高校生か、
 良さそうに見えて、本当は悪い高校生なのか。
 悪そうに見えて本当は良い高校生なのか。」
「ワケわかんねーよ。」
「だろ?
 だから名前や職業じゃその人が誰なのかなんて、
 ワケわかんねーなんだよ。
 お前たちは誰だ。」
「・・・ダメだ。相手にすんな。行こう。」
その場を立ち去る洋貴と凛久。
朔太郎は潮の香りに笑顔を浮かべる。

湘南学館高等学校
体育館では、神谷龍之介理事長(小日向文世)が訓話中。
「28万9452。
 3年生諸君。この数字が何かわかりますか?
 君たちに残された、センター試験までの時間です。
 今その数字を聞いて、まだまだ時間があると思った者・・・
 君たちは志望校には受からない。」

「柴草先生、校長がいませんね。」と赤木(池田 鉄洋)。
「呼ばれてないでしょう。
 校長が失脚した今、我が校は理事長のワンマン体制と
 なりましたからね。」と柴草修平(八嶋智人)。

「学歴社会は終わった。
 偏差値教育は間違って入る。
 それは、現実を見ていない者たちの奇麗事だ。
 真に君たちを思うものはこう言うだろう。
 君たちの未来は、偏差値が決める。学歴が決めると。
 残された時間を想像出来ないものは、単位をお金に変えてみなさい。
 1時間ごとに60円ずつ捨てていってるものだと。
 28万円なんてあっという間になくなります。
 残すところ、28万9450分。
 無駄に使わぬように。
 終わります。」

「相変わらず理事長の話は説得力がありますね。」と柴草。
「ミス東大がまだ来てません。」と赤木。
「何をしてるの?あのお嬢さんは。」と真山春佳(吉瀬美智子)。
「ようやく担任任せてもらえるようになったって言うのに・・。」と柴草。

新担任となるはずの榎戸若葉(北川景子)は、校門を駆け抜けたところで、川辺英二(山本裕典)と激突。
「イッテー。ちょっと何するのよ!」
「・・・」
「あ!あなた3年1組の川辺君ね!
 よろしく!
 私今日から1組の担任に。」
黙って立ち去ろうとする英二。
「ちょっとどこ行くの!」
「学校辞めることにしたんだよ。」
「え?」
「どうせ誰も止めねーし。」
「うん・・まあ、高校は義務教育じゃないし、
 誰も止めやしないでしょう。」
持っていた上履きをゴミ箱に放り投げると、英二は若葉を見つめ・・
そしてその場を去る。
「あーあ、めんどくさい! 
 あ、遅刻遅刻!」

体育館にこっそり入る洋貴と凛久。
「二人で朝帰りして遅刻!」灯里がからかう。
「そんなわけないだろ。」と洋貴。
「変なのに掴まっちゃってさ。」と凛久。
「凛久、スカートに何かついてるよ。」と大和。
「ワカメ!」と八朗。

そこへ、若葉がやって来た。
ちょうどその時、3年1組の担任が発表されようとしていた。
しかし、長谷部杏花校長(戸田恵子)が担任に指名したのは櫻井朔太郎だった。

「それでは先生、お願いします。」
「はーい!」
体育館のドアを開け、元気に返事をする朔太郎。
スーツがびしょぬれの朔太郎に驚く一同。
「僕です!こっちです!」
体育館の中央まで進む朔太郎。
彼を取り囲む生徒たち。
「・・・ここでいっか。
 ここでーす!
 はじめまして。
 今日から、みなさんと一緒に、お勉強します。
 櫻井朔太郎です。よろしく!」

いつの間にか体育館にやって来ていた長谷部校長が微笑を浮かべる。

「うそでしょ・・」と凛久。
「あれ最悪だぞ。」と洋貴。

朔太郎が凛久と洋貴を見つけ、笑顔で手を振る。

廊下を歩く柴草、朔太郎、若葉。
ボールペンをカチカチ鳴らす朔太郎に柴草が言う。
「カチカチカチカチ気になるなー。」と柴草。
「え?あ、失礼。」
「溺れた子どもでも助けたんですか?」
「ええ、そうなんです。」
「何言ってるんですか?今は笑うところです。」と若葉。
「笑うところじゃないよ!」
「すみません・・。」
「あ、ちょっと。その格好で教室行く気?」
「あ、授業やってるうち乾きますから。」
「初日なんだからこういう気合入った格好しなきゃ!」
若葉が柴草の白いスーツを指差す。
「別に気合入ってないよ!普段着だよ。」
「すみません・・。」
朔太郎は二人を置いて教室へ。
「ちょっと先生!・・・何なんだよ。」
「私が副担任ってどういうことなんですか?
 柴草先生、私が担任だって言ったじゃないですか。」
「知らないよ。校長の人事だ。校長に聞いてよ。」

3年1組の教室
茂市の水泳大会への期待に顔を曇らせる洋貴。
そんな洋貴を心配する凛久。

そこへ、朔太郎が、ボールペンをカチカチ鳴らしてやって来る。
「・・・シャンプーの匂いだな。」
「起立!」
「ああいいよいいよ。立たなくていい。
 お前ら髪サラッサラだな。
 いつも朝風呂入ってるのか?」
「・・はい。」
「何の話だよ。」と洋貴。
「お前今日朝ご飯何食べた?」
「トーストと・・コーヒーです・・。」
「朝パンだ!朝パンだよな!」
「だから何・・」と灯里。
眠っている生徒の前に立つ朔太郎。
「最近の消しゴムって300円もするんだ・・。」
「そっち!?」と八朗。
「あ!!」
朔太郎が洋貴と凛久を見つける。
「・・・」
「いたいたいたいたいた!
 さっき偶然海岸で会ったんだよな!な!!」
「何あれ。」と大和。
「ほっとこ。」と羽菜。
クラスの大半は自習をしている。
「あの!」
「お、なんだ?質問か?」
「今何をしているんでしょう。」
「何をしてる。難しい質問だな。」
「はじまったよ・・。」と洋貴。
「授業をして下さい。」
「授業って何の授業?」と朔太郎。
「何のって・・。」
「先生の授業です!」
「授業は俺のものじゃない。お前たちのものだ。
 俺はまだお前たちのことを何も知らない。
 お前たちも、俺のことを、まだ何も知らない。
 どんなことでもいい。お前たちのことが知りたい。」
「僕達のことをお知りになりたいなら、職員室に記録があると思います。」
勉強をしながら大和が言う。
「読んだよ。読んだけど、あそこに書いてあるのはお前たちの名前と
 成績だけだ。」
「それがわかれば充分かと思います。」と大和。
「そうかな。
 俺が知りたいのはさ、例えば、」

そこへ若葉がやって来た。
「えー、みなさん、副担任の榎戸若葉です。
 授業の見学をさせていただきます。
 何ページ?」
「まだ始まってません。」と灯里。

「例えばそうだな、お前たちが将来何になりたいのかとか、 
 5年語10年後、お前たちが、未来に思い描いている自分の姿を
 教えてくれないか?」
朔太郎の言葉に呆れる生徒たち。
「どうだ。」朔太郎が灯里に聞く。
「別にありません。」
「別にありませんなんてことないだろ?
 お前は?」
朔太郎に聞かれ答えようとする八朗だが、灯里に答えるなと合図され
「ありません。」と答える。
「将来何になりたい?」朔太郎が凛久に聞く。
「・・・別にありません。」

「そんなんこと聞いても、誰も答えられないと思いますよ。」と若葉。
「どうして?そんなはずないだろ。
 何になりたいのかわからないことには、」
その時、生徒の一人・貴林優奈(黒瀬真奈美)がわざと筆箱を落とす。
「将来何になりたいのかわかって初めて、」
生徒たちが次々と筆箱を落とす。
「・・・」
「先生。生徒たちから完全に引かれてますよ。」と若葉。
「・・・わかった。
 授業始めよう。
 えー、教科書とノートはしまって。」
「・・・」
「今日の授業は、そうだな。
 今日の授業は、にらめっこだ。」
「にら??」と凛久。
「・・・」
頬をプッと膨らませ生徒たちを見渡す朔太郎。

大和が挙手する。
「手を挙げなくていいぞ。どうした?」
「そのにらめっこは試験に出るんですか?」
「試験?」
「ええ。受験に関係あるんですか?」
「受験。」
「いいぞ大和!」と洋貴。
「そうだな。そしたら、これ試験にしよう。
 俺に勝ったら100点、負けたら0点な。」
今度は羽菜が手を挙げる。
「手を挙げなくていいって。」
「失礼ですが、その試験で100点を取るとどこの大学に入れるのか、
 教えていただけますか?」
「大学?」
「受験に関係ないのなら、無意味だと思います。」
「無意味ってことは・・」
「私の第一志望は、慶應の医学部です。
 試験科目は数学1A、2B、3C、英語、物理化学、生物から2科目。
 小論文と面接ですが。
 私の知る限り、にらめっこに関する問題が出題されたことはありません。」
「羽菜カッコイイ!」と灯里。
「あー、わかった!お前は医者になりたいんだ!
 病気の人を助けたい!」
「いいえ。自分の偏差値に応じた大学を受けるということです。
 二次志望は医学部ではありませんし。」
「医者の仕事ってのはさ、人の命を助けるってことだよ。
 勉強できるできないっていうのは別のことだよ。」
「そんなことは知ってます。」
「だったら、」
「僕達は忙しいんです。
 1分一秒惜しんで勉強している時に、
 そんなくだらない遊びをしている暇はありません。」と大和。
「・・・
 お前たち幼稚園児か。
 本当にどうしたいとか、将来どうなりたいとかないのか?」
「・・・」
「もしそうだったら、お前たちは幼稚園児だよ。
 幼稚園児には幼稚園児の為の勉強がある。
 それが、にらめっこだ。
 今から俺とお前ら全員、先に眼をそらしたほうが負けだ。
 いいな。
 はい、3、2、1、スタート!」
「別に私0点でいいですー。」灯里が教室を出ていく。
「あ、じゃあ俺も0点でいいです。」と八朗が。
「図書室?」と羽菜。
「ああ。自習しよう。」と大和が。
次々に教室を出て行く生徒たち。
凛久も出ようとするが、洋貴がにらめっこに答えている。

図書館へ向かう大和たち。
そこへ、若葉に様子を聞いた神谷理事長たちがやって来た。
「ここは、檻の壊れた動物園ですか?」
「・・・」
「そう。私は植物園の方が好きです。」

「何をなさっているのでしょう。」
神谷が朔太郎に聞く。
「にらめっこです。」
生徒から視線を外さずに答える朔太郎。
「授業をほっぽりだして遊んでるわけですか。」と赤木。
「半分正解、半分不正解です。
 遊んじゃいますが授業を放り出してはいません。」
「先生は当校のことをご存知ですか?」と神谷。
「湘南学館高校です。」
「名門進学校です。
 毎年東大に40名、京大に10名、」
「あの先生、」
「先生じゃありません。理事長です。」と若葉。
「早稲田政治経済学部に30名、慶應医学部に」
「あの、気が散るんで、話しかけないで下さい。」
「・・・」
「何言ってるんですか!今せっかく理事長が、
 御託を並べている時だったのに!」と若葉。
「ゴタク?」と神谷。
「あ・・使い方間違えました。私いつも間違ってしまって。
 前にも面接で御社の利益をアブク銭って言ってしまって。」
「ちょっと黙って。
 あんたねー!!」と赤木。
「赤木先生。大きな声をださないで下さい。」と神谷。
「すみません。」
「この方を招かれたのは校長先生でしたね。
 私から話しておきましょう。
 ・・・にらめっこ、楽しそうですね。」と神谷。
「一緒にやりますか?」
「・・所用がありますから。失礼。」
神谷は呆れて帰っていく。
「間違ってないぞ。あれはゴタクだよ。」朔太郎が若葉に言う。
「私側につくようなこと言わないで下さい!」
若葉も怒って立ち去った。

授業終了のベルににらめっこをやめて立ち上がる生徒たち。
「今目をそらした者は負けだ。」
「え!?終わったんじゃないんですか!?」と凛久。
「いや。最後の一人まで続けるんだ。」
「えーっ・・・。」

校内の植物園で草花の手入れをする長谷部校長。
「ママ!」と若葉。
「しーっ!学校ではママって言うな!」
「どうして私があんな変人教師の副担任なの?」
「パパ、元気?」
「生徒を幼稚園児扱いしてるのよ。
 高校生相手ににらめっこなんかして。」
「へー。幼稚園で習うことって、大切なことよ。」
「学校は、勉強する場よ。」
「あなたは、何のために東大出たの?」
「何のためって・・将来の為よ。」
「その将来が何なのかを、生徒たちがわかっていない。
 だから、幼稚園からやり直してるんじゃない?」
「・・・」
「東大を出ても、何をすればいいのかわからなくて、
 とりあえず、教師になった誰かさんみたいにならないように。
 そうだ。水泳部の顧問が空席なの。あなたやって。」
「嫌です!私、もうこんな学校辞める!」
「どうぞ。誰も止めないわよー。」
母を睨み、そして立ち去る若葉。

この二人は母娘だったんですね。
苗字が違うのは、長谷部が離婚をしたから。
若葉は父親と一緒に暮らしているようです。
北川さんのヘン顔は、『モップガール』を思い出します。

ついに、教室には洋貴と凛久、朔太郎だけが残った。
朔太郎の携帯にメールが入る。
「誰から?」洋貴は朔太郎から目をそらさずに携帯を凛久に渡す。
『負け犬へ
 電話をよこせ』
末吉からだった
「・・・末吉君。電話しろって。」
「・・・」
「ねえ、洋貴は負け組みなんかじゃないよ。」
「補欠で入学したし。」
「でも受かったじゃん。」
「毎年留年しかけてる。
 大体この学校に入れたのは、死んだおふくろの保険があったからだ。
 みんなとは違う。」
「だから洋貴はいつも頑張って、」
「そうやって、励ましてる時点でお前は勝ち組みなんだよ。」
「え・・」
「なんかさ、頑張れって言われると、惨めになるんだよ。
 俺もなりたかったよ。頑張れって言う側に。」
「だからってわざと負ける気!?最後なのに!?
 この一年今日の対抗戦の為に練習してきたのに!?」
「・・・負けたって別に減るもんじゃないし。」

朔太郎が歩み寄る。
「何だよ。」
「お前将来何になりたい?」
「別に。そんなこと想像したって無駄だし。」
「何でそう思う。」
「叶わないからだよ。
 子供の頃の夢が叶ったやつなんて、100人か1000人に一人だろ。
 俺はその一人じゃない。
 違うか?
 頑張れば絶対にその一人になれんのか?」
「・・違わない。
 夢は叶わないこともある。」
「ほらな。それが本音だろ?」
「人生には、努力が無駄になることもあるし、
 恋が実らないこともある。
 悪が、正義に勝つことだってある。
 だけどな、」
その時、洋貴の携帯が着信する。
洋貴は微笑を浮かべると、朔太郎から視線を外し、携帯をチェックする。
「ごめん。すぐ掛け直すわ。」
「・・・はい負けた!」と朔太郎。
洋貴はお手の写真を朔太郎に見せる。
「そうだよ。これが俺なんだよ。
 だから何だよ。」
「・・・」
洋貴は出ていってしまう。
凛久も洋貴を追いかけ・・。

廊下を文句言いながら歩く若葉。
「なによ!少しぐらい止めたっていいじゃない!」
自分の上履きを捨てようとしたその時、若葉は川辺英二のことを思い出す。
彼も、
「どうせ誰も止めないし。」と言っていた。
若葉は彼の上履きをゴミ箱から拾い上げ・・。

そこへ、与田先生(今井ゆうぞう)が水泳部メンバーと共にやって来た。
「あ!若葉先生!水泳部の顧問、担当してくださるってお話で!」
「いえ、私は・・」
「よろしく!!」満面の笑みで若葉の肩を叩き、立ち去る与田。
「うわ・・体育の先生って嫌い。」
「あの、対抗戦のメンバー表なんですけど。」と茂市。
「うん。」
「あ、いた。あいつが、うちのエースで。」
茂市が、携帯で誰かと話す洋貴を指差す。

「わかってるって。
 わざと負ければいいんだろ?
 うん。足でもつったふりするからさ。」
洋貴は茂市たちが自分を見ていることに気づく。

カフェテリア
「気にすることないよ、羽菜。」と灯里。
「あんなの奇麗事だよ。
 人の命がどうとか考えて、医者になる人なんていないから。」と大和。
「別に気にしてない。」と羽菜。
「あーでも俺にらめっこだったら絶対勝つ自信あったなー。」と八朗。
「あれ?ハチはアレの味方なんだー。」と灯里。
「いやそんなことないよ。
 もしあいつが今度そんなこと言ったら俺がバシっと、」
八朗の後ろに朔太郎がいた。

朔太郎が5人と同じテーブルにつく。
「むこうの席空いてますよ。」と凛久。
「え?ああ。行くか?」
「一人で行って下さいよ。」と凛久。
「いやだって一人で食べたって美味しくないじゃん。」
「あなたと食べたらこっちも、」

そこへ、茂市が洋貴に掴みかかりながらやってきた。
必死に二人を引き離そうとする水泳部メンバーと若葉。
「洋貴!!」凛久が、他の4人が駆け寄る。
テーブルに一人残った朔太郎は昼食を食べ続け・・。

「こいつ、今日の対抗戦わざと負ける気なんだよ!」と茂市。
「何言ってんの?洋貴がそんなことするはずないじゃん。」と灯里。
「え・・勘違いだよ。な、洋貴。」と大和。
「・・・」
「テメー、なんか言えよ!」茂市が洋貴を殴りつける。

生徒の食事の味見をする朔太郎。

「お前には・・対抗戦のメンバーから、外れてもらう。」と茂市。
「そうしてくれ。」
洋貴はそう言いその場を去る。
「裏切り者!!
 あいつを、メンバーから外して下さい。」茂市が若葉に言う。
「ええ・・。」
「ダメだ!」と朔太郎。
「え?」
「ダメって何でダメなんですか!?」
「何ででも。」と朔太郎。
「ちょっとあなた顧問でもないくせになに勝手に!」
「予定通りアンカーは、彼に泳いでもらえ。」
そう言い朔太郎はカフェテリアを出ていく。
「洋貴をメンバーから外して下さい!
 そうすればわざと負けなくて済むんです!
 安心できるんです!」凛久は朔太郎に言う。
「安心?」
「ええ。」
「それは安心じゃない。諦めるっていうんだよ。」
朔太郎はそう言いその場を去る。

家に戻った洋貴は、工場の看板を見つめる。
『コーラルリーフテクノロジー』

「ただいま。」明るい声で従業員に挨拶する洋貴。
「おかえりなさい。」
そこへ父・正洋(松重豊)が、お盆を手にやって来た。
「何してんの親父。」
「末吉さんちの子がいらしててな。」
「は?」

工場の奥に、末吉とその友達が来ていた。
「おかえりー、根岸君!
 君のお父さん気ー利かないねー。
 普通高校生お茶飲まないでしょ!」
そう言い茶碗を投げ捨てる末吉たち。
「何でここにいるんだよ。」
「そっちこそ、対抗戦どうした。」
「バレてメンバーから外されたよ。」
「はぁ!?何なのそれ、困るんだよ!
 こっちだってうちの水泳部に頼まれてんだから!
 頭下げてもう一回入れてもらえよ。
 頭の下げ方親父に教えてもらってさ。」
「・・・オマエな!!」末吉の掴みかかる洋貴。
すると末吉の仲間が取り囲む。
「あれー。
 お父さん、オタクの息子暴力するんですけどー。
 これって大問題じゃない?」
「よせ・・洋貴・・。」
父の言葉に洋貴は手を離す。
「ちゃんと負けてこい。
 じゃなきゃまたお父さんに、土下座してもらうことになるかもよ。」
「・・・わかったよ。負ければいいんだろ。」

その様子を、朔太郎と凛久が見ていた。
洋貴に続き工場を出ていく朔太郎。
洋貴の姿をすぐ側の海岸に見つけると、微笑み、工場を見上げる。

「何が見える?
 海か、空か、それとも、おまえ自身の将来か。」
「・・・あんたは何もわかってねーよ。
 俺は別に勝ち組とかになりたいわけじゃねーんだ。」
「そっか。」
「昔から貧乏で、ずっと親父と二人きりだったし。
 俺は、親父が船を作っている後姿を見て育った。
 たいした儲けにならない船ばかり作ってたけど、
 仕事に誇りを持っている親父のことを、カッコイイと思ってた。」
「そっか。」嬉しそうに微笑む朔太郎。
「だけどある時家に帰ったら、親父背広来た男と話してて。
 事業の特徴だとか、技術の活用だとか言って、
 何日かしたらうちの工場の名前変わってた。
 親父の造船所は、与えられたノルマをこなすだけの下請けになった。
 ・・・貧乏でも楽しかったよ。
 だけど無くなったのはさ・・・金じゃない。
 カッコ良かった・・・世界一カッコ良かった親父の後姿だよ。
 ・・俺だって将来の夢ぐらいあったよ。
 だけどさ、そんなの叶わないじゃん。
 俺は多分このまま、」
「青い画用紙にさ、青いクレヨンで絵を描くとどうなる?」
「・・何も見えないに決まってるじゃん。」
「じゃあ絵は何も描いてないっていうのか?」
「・・・絵は描いてあるけど。」
「絵はあるんだよ。
 例え見えなくたって、確かにそこに絵はあるの。
 見えないだけ。見えなくてもそこにある。 
 その絵は、青春と呼ばれる絵だよ。」
「・・・」
「あがけ。
 あがくことで見えてくるものがある。
 たとえいつか敗れても、たとえ夢が叶わなくても、
 あがけばあがいた分だけ、ここ(心)に残る。」
「・・・」
「ここ(心)に残せ。
 全力で青春の絵を描け。
 それはお前の人生で、一番の味方になるから。」
「・・・」
「最後なんだろ?
 今日の為に頑張ってきたんだろ?」
「でも・・わざと負けないとあいつ、また親父に・・」
「俺に任せろよ。」
「任せろって・・」
「行けって。お前は何も考えずに、スタート台に立って
 力いっぱい泳いで来い。」
「・・・」
朔太郎は迷う洋貴の背中を押し・・。

学校に行った洋貴を、大和ら4人が待っていた。
「洋貴対抗戦に出るの?」と灯里。
「出てどうするの?」と羽菜。
「わかんねー・・。」
「わかんねーって・・。」

そこへ、茂市たち水泳部が通りがかる。
「何で戻ってくんだよ。」
「あーあ、結局負けかよ!」
文句を言いながら素通りする。
洋貴は黙って水泳部員たちのあとを追い・・。

「どうする?」と八朗。
「塾があるし・・。」と羽菜。
「今日から受験に集中しようって。」と大和。
「じゃあ・・帰る?」と灯里。

末吉たちを睨みつける朔太郎。
「な、何ですか。僕は別に・・」と末吉。
「・・・頼む!」
「・・・」
「あいつを、自由に泳がせてやってくれないかな。
 その代わり俺が使いっぱしりでも何でもやる。」
「え!?パシリってあんた、教師でしょう!?」
「言われたこと何でもやる。」
「じゃあやってもらおうかな!西高名物地獄のしごき三番勝負!」
「三番勝負?」
「その1!」
悪いコなくせに可愛いポーズだ!

神社へと続く長い長い階段を駆け上がる朔太郎。

「その2!」
海岸、末吉を乗せたゴムボートを引いて走る朔太郎。

「その3!」
大荷物を括りつけた自転車で、江ノ電と競争する朔太郎。

「二度と洋貴にちょっかい出さないで!」と凛久。
へとへとになった朔太郎とその場を去ろうとする。
「その4!」
「おいおいおい。三番勝負だって。」
「いやあんたじゃなくて、彼女。」
「え?」
「写真撮らせてくれないかな。」
「写真?」と凛久。
「君の下着姿の。」
「・・・」
「別に裸撮らせてくれって言ってるわけじゃないんだしさ。
 撮らせてくれたら、もう二度と根岸とは関わらないから。」
「・・・」
「根岸のためじゃん。ね!」
「・・・わかった。」と凛久。
「帰ろう!」と朔太郎。
「え?」
「そろそろ戻らないと対抗戦始まっちゃうだろ。」
「ちょっと待てよ今僕は彼女と話しをしてるんだぞ!」
上着を放り投げ末吉に歩み寄る朔太郎。
「な、なんだよ!何でもするって約束したじゃないかよ!」
朔太郎は末吉を後ろ向きにさせ、ずり落ちたズボンを引っ張りあげる。
「パンツ見えちゃうぞー。だらしないなー。」
怯える末吉。
「行こう。」
朔太郎は凛久にそう言い歩き出す。
「ふざけるな!僕をバカにするな!
 僕は根岸なんかよりずっと偉いんだぞ!
 あんな工場一言言えば潰せるんだぞ!!」
「そんなことは、」
「証明してやるよ。
 あいつの親父の土下座している写真撮って、
 あいつに送りつけてやる!!
 あいつ、ショック受けて溺れちゃうんじゃね?
 あいつの負けだよ!!
 行くぞ!!見てろよ!!」
末吉たちが立ち去る。
彼らを追いかけようとする凛久。
「待て待て待て。」朔太郎が止める。
「下着の写真くらい、なんてことないです!
 そんなの撮られたって別に減るもんじゃないし。」
「そうかな。お前のしようとしていることは、」
「子どもの頃は大人からよく聞かれました。
 大人になったら何になりたいって。
 子どもなりに考えて答えてたけど、
 でも本当はそんなの嘘だったんです。
 だって、いざ大人の一歩前まできたら、そんなこと聞かれなくなるもん。
 大人が聞くのは、どこの大学を受験するの?
 大学に入ったら今度はどこの会社に入るの?
 結婚はいつするの?子供はいつ産むの?
 子どもはどこの学校に入るの?
 ・・・何になりたいかなんて聞くことないじゃない。
 はじめから決まってるんだから。
 ・・・洋貴の夢は、お父さんの造船所を継ぐことだったの。
 あんなことにならなかったら、洋貴は今でも自慢げに
 言えてたはずなんです。
 僕の夢は、お父さんの造船所を継ぐことですって。」
「・・・」
「私達の未来は、私達が決める前に決まってるんじゃない!」
凛久はそう言い、その場を走り去る。
朔太郎は自分の胸に手を置き、そしてシャツをぎゅっと握りしめると、
苦しそうに目を閉じ・・・。

彼が静かに目を開く。そして鋭い眼差しで歩き出し・・。

凛久の言葉が朔太郎の胸に突き刺さったのでしょう。

第23回湘南学館・湘南西高対抗戦
たくさんの生徒たちが声援を送る会場に、柴草と若葉たやって来た。
「人間が魚の真似をして何が面白いんだか。」と柴草。
「金槌なんですか?」と若葉。
「今なんか言った!?」
「いえ・・」
「だよね。」

そこへ、神谷理事長らがやって来た。
「どうなされましたか!
 今年はやっぱり、中止ということになさいますか?」と柴草。
「理事長は観戦されます。」
「え!?」
「見ちゃまずいですか?」と神谷。
「人間は・魚を越えられます!どうぞ!」

会場に、八朗、灯里、大和、羽菜もやって来た。
「3年で来てんのうちらだけじゃない?」と灯里。
「今日だけ特別ね。」と羽菜。
「明日から頑張ろう。」と大和。

円陣を組む西高水泳部。
「行くぞ!」「おー!」
「行くぞ!」「おー!」
「行くぞ!」「おーーーー!」

同じく円陣を組む湘南学館。
「西高、絶対ぶっ倒す!」と茂市。
「今日で最後だからね。」
「湘学、」「・・・おー!!」

「バラッバラだこれ・・。」と八朗。

選手たちがお互い握手をしていく。
「おめーか。末吉のパシリっていうのは。」
「・・・」
「頑張れよ。負けんの。」
「・・・」

その頃、末吉たちは洋貴の実家にいた。
「ねえ、謝ってよ。」
「すみません。」
「そうじゃなくてさー、パパにしてたみたいにさ!」
末吉が携帯を正洋に向ける。
「やめなさいよ!」と凛久。
「・・・何か用?」
「私の写真、撮りたいんでしょ。」
「・・・うん!」
「その代わり、二度と洋貴には関わらないって、」
「うん!約束する。
 じゃあ脱いで。今脱いで。」
「え・・」
「あれ!?できないのー!?」
「・・・できる。」
「脱げ!」
末吉と仲間たちが脱げとはやし立てる。

洋貴のためと、凛久が制服のボタンに手をかけたとき、
手にチェーンソーを持った朔太郎が乗り込んできた。
「先生!何持ってるんですか!?」
朔太郎は冷たい視線でチェーンソーのカバーを取り外す。

学校
水泳大会が開始される。
はりきって応援する八朗。
「ダメだよ応援しちゃ。」と灯里。
「え?」
「洋貴に回る前に、決着がついてるほうがいいんだよ。」と大和。
「あー、なるほど!
 よーし!溺れろー!湘学ーーー!!溺れてーーーー!!」
西高がどんどん差をつけていく。

工場
朔太郎はエンジンをブンブン鳴らしながら末吉らに近づいていく。
恐怖で逃げ出す末吉の仲間たち。
動くこともできずに座り込み、「ごめんなさい!!」と謝る末吉。
朔太郎は、末吉の前に立ちはだかり、しばし睨みつけると、
無言で階段を昇っていく。
朔太郎は『コーラルリーフテクノロジー』と書かれた看板を切り始め・・。

切った看板を下に蹴落とす朔太郎。
すると、『(有)根岸造船所』の看板が姿を現す。
その看板に嬉しそうに微笑む朔太郎。
そして正洋も、凛久も、その看板を見つめ・・。

学校
茂市が西高との差を縮めていく。
仲間の必死に泳ぐ姿に、洋貴は・・。

工場
「これはうちの会社のものなんだぞ!
 器物破損だ!!」と末吉。
「それがどうした。」と朔太郎。
「・・・」
「人の上に立つの楽しいか?
 うん?気持ちいか?」
「僕は勝ち組なんだ!」
「金持ってりゃ勝ちか?なきゃ負けか?
 違うよ。
 人に勝つってのは勝つことじゃない。
 自分に勝ったやつ、自分の目標に届いたやつが勝ったやつなんだ。」
朔太郎はそう言うと、末吉ではなく凛久たちに語りかける。
「減らないことなんてないぞ。
 わざと負けたり、嫌なことすれば、心が減るんだ。
 何やったって、絶対に譲っちゃいけないことがある。
 絶対に守んなきゃいけないものがある。
 それは、・・・誇りだよ。」
その言葉に凛久は黙り込み、正洋は看板を見つめる。
「自分自身に胸を張れるってことだよ。
 金や地位じゃない。
 人の目やルールじゃない。
 上司でも教師でも誰でもない。
 自分の胸に問いかけるんだ。
 僕はこれでいいのか。
 僕は正しいのか。
 僕は今、胸を張って生きてるか。
 この胸だけが、生きてくうえでの道しるべになるんだから。
 ・・・未来は、まだ何も決まってなんかいない。
 お前たちはどこだって行ける。
 お前たちの未来を決め付けるヤツがいたら、
 そいつは、ぶっ飛ばしちゃえ。
 お前たちの未来はまだ真っ白なままだ。
 どこだって好きなところへ行ける。」

「こ、こんな工場、パパに頼んで潰してやる!!」
「潰せるものなら潰せ!!」そう叫んだのは、正洋だった。
「・・・帰れ。」
正洋の強気な態度に、末吉が逃げ出す。

「・・・勝手なことして、申し訳ありません。」
朔太郎が正洋に謝る。
「いえ。先生。」
正洋は朔太郎に深く頭を下げ・・
そして、新しい看板を踏みつけ、工場に戻っていく。

学校
スタート台に立つ洋貴。

工場
船に掛けられたブルーのカバーを外す正洋。

学校
「おい、洋貴!!凛久から!!」
八朗が洋貴に携帯を投げる。
その写真には、壊された新しい看板と、懐かしい看板の姿が映っていた。
「洋貴!頼む!!」
茂市がそう叫びながら泳いでいる。

迷いを無くした洋貴は、全力で遊泳。
そんな洋貴を嬉しそうに見つめる仲間たち。

そして・・・
「勝者、湘南学館!!」
湘南学館が勝利を納めた。

湧き上がる生徒たちの中、冷静な神谷。
「これも、リストに加えましょう。」神谷が真山に言う。
「はい。」
「リストって?」と柴草。
「受験の妨げとなるものは、排除する方向で動いています。」と真山。
「だよねー。人間は魚にはなれない。」と柴草。
神谷たちが会場を去る。

駆けつけた凛久は、洋貴が本気で泳いでくれたと知り
嬉しそうに微笑む。

プールから上がろうとする洋貴に、朔太郎が手を差し伸べる。
「残したか?」自分の胸を指して聞く朔太郎。
「・・・うっせーよ。」照れくさそうに答える洋貴。

洋貴の元に駆け寄る凛久の頭を鷲づかみにし、
朔太郎はその場を去る。
「洋貴!勝ったんだね!」
「おぅ!」
二人は朔太郎の背中を見つめ・・。

若葉は仲間たちを見つめていた英二に気付く。
「ねえ!戻ってきたんじゃないの?」
「別に。」
「これ。」英二が捨てた上履きを見せる若葉。
「なんでそれ・・。」
「どうすれば、学校辞めるのやめてくれるのかな。」
「は?何で俺にそんなこと言うわけ?」
「私ね、3年1組の担任じゃなかたの。
 だから、私が担任だと思ってた時の生徒は、あなたしかいないの。
 ね、戻ってきなさいよ。私はもう少しここに、残ることにしたから。」
「・・・考えてもいいよ。」
「本当?」
「その代わり、」
「その代わり?」
「・・・俺と結婚して。」
「え!?」

理事長室
「理事長。生徒たちは、あなたを信じています。
 勉強さえすれば、受験勉強さえすれば未来は開かれるという
 あなたの言葉を。」と長谷川校長。
「あなたの、最終学歴はどちらでしたかな。」
「日本女子大です。」
「私は、のぜ第三中学校です。
 中卒です。
 私がこの地位に来るまでに、中卒であるが故に
 どれ程の苦労を背負ってきたか、あなたにはわからないでしょう。」
「・・・しかし、」
『内秘
 私立湘南学館高等学校
 2008年 学年別調査報告書』
を取り出す長谷部。
「このことが公になれば、現在3年生である生徒は全員、
 卒業資格を失うかもしれません!
 彼らが今必死に、その人生の全てを捧げて取り組んでいる
 受験勉強が、何もかも無駄になるんですよ!
 彼らの未来が、閉ざされてしまうことに!!」
「私は間違ってない!!」
「・・・」
「もっと子どもたちを、愛して下さい。」
「・・・」

渡り廊下で朔太郎と長谷部校長がすれ違う。
背を向けたまま語りだす長谷部。
「この学校の事情は、以前お話した通りです。」
「・・・はい。」
「私は、あなたの力にはなれそうもありません。」
「・・・はい。」
「あなた一人で、生徒たちを守って下さいますか?」
「・・そのために帰ってきました。」
二人は振り返り、お互いを見つめ・・
そして長谷部は足早にその場を去る。

丁度そこへ、校舎から神谷が出てきた。
車に乗り込む神谷に会釈をする朔太郎。
神谷はそれを無視し、車に乗り込む。

校長室
引き出しから書類を取り出す長谷部。
そこには、戦車の前で大きく手を広げる兵隊の写真。
それは、朔太郎だった。

夕方、海岸を歩く洋貴たち。
「今からじゃ塾間に合わないよ。」と凛久。
「あいつのせいだよ、あいつの。」
「あ!うちの学校の裏サイトあるじゃん。
 あれの嫌いな先生ランキングで早速1位になったらしいよ。」と八朗。
「へー、私も投票してみようかなー。」と灯里。
「やめなよ!あの人洋貴のこと心配してくれてたよ。」と凛久。
「よけいなおせっかいなんだよ。」と洋貴。
「でも・・」
「なんだよ。凛久はあいつの味方かよ!」と茂吉。
「違うよ、違うけど・・」
「明日もいるのかなー。」と灯里。
「いるだろうねー。一応担任だし。」と大和。
「別にいいんじゃない?
 私達はもう、高校生は卒業したんだから。
 あの人は、私達の先生でも何でもないんだから。」と羽菜。
「・・そうか!洋貴たちも引退したし、今度こそ全員受験生か!」と凛久。
「そういうことです!じゃあ頑張りましょう!」と八朗。
「おーーっ!」

そこへ、サーファーの格好をした朔太郎が現れた。
手には茂市が捨てたボードを抱えている。

「よう!
 一緒にどうだ?」朔太郎が7人に声をかける。
「ちゃんと捨ててこいよ、茂市・・。 
 てか何で勝手に拾ってくんだよ。
 もう、行くぞ!」と洋貴。
「3年1組!
 根岸洋貴!
 白崎凛久!
 田幡八朗!
 屋嶋灯里!
 楠木大和!
 日垣茂市!
 澤水羽菜!
 俺と一緒に、最高の夏を送ってみないか?
 高校生最後の、夏の思い出、作ってみないか!?」
「・・・」
朔太郎はサングラスを外し7人に微笑みかけ・・。
不可なものを除外していて、残ったものをいかにありそうにそれが真相でござる―柯南道尔
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Episode 2
『地球一熱い教師VS恋を金で売る女生徒!
 本気で好きなら胸を張って馬鹿になれ!!』

夜遅く、眠っていた田幡八朗(濱田岳)は。携帯の着信音で目を覚ます。
「・・はい。」
「ハチ!!」灯里(吉高由里子)の声。
「灯里・・どうした、こんな時間に。」
灯里の悲鳴に飛び起きる八朗。
「助けて!」
「どうした・・」
「私の彼氏がケンカしてるの!」
「誰と?」
「私の彼と私の彼が私を取り合ってケンカしてるの!!」
「はぁ。二股じゃん!」

灯里のいるカラオケボックスへと駆けつける八朗。
男たちは殴りあいながら、自分は灯里にバッグや時計をプレゼントしたと
言い合っている。
「さては、お前もレインボーマンの一人!?」
男が八朗に聞く。
「レインボーマン?」
「お前も灯里ちゃんから貰っただろ?
 灯里ちゃん特性の、私はあなただけのものよストラップ!」
右側の男には『I(ハート)YOU ONLY』緑バージョン。
左側の男には、オレンジバージョン。
「彼女は七股してたんだ。」
「七股!?」
「違うわ!私の本命は彼よ。」
灯里の言葉に、男のパンチが八朗に飛ぶ。


翌朝、殴られた場所に絆創膏をつけて登校する八朗。
「七股だよ!七股!!」
八朗が、根岸洋貴(岡田将生)、白崎凛久(北乃きい)、楠木大和(冨浦智嗣)に訴える。
「ハチは八番目なのか!」と洋貴。
「上手い!」と灯里。
「上手くない!!」
「いやーでもちょっと、人聞き悪い。
 私は、あの人たちとご飯食べに行ってただけなの。」と灯里。
「灯里とハチってさ、不思議な関係だよね。」と凛久。
「友達?」と大和。
「友達以上だよ。」と八朗。

「あ、洋貴ボタン取れてるよ。」と凛久。
「ほんとだ。あれ?どこ行った?」
「あとで貸しなよ。」
「何そのママ発言。」
「あー、ムカツク!何この人!」
灯里はそんな二人を見つめ・・・。

灯里は洋貴が好きなのかな?

そこへ、茂市(鍵本輝)が駆けつける。
「おい!!灯里!!」
「何。」
「学校の掲示板に、こんなものが。」
『淫行高校生 屋嶋灯里』写真入の紙を持ってくる。
「バッグや指輪などの高級ブランド品やそれらを購入するための
 現金をむしりとってる最低最悪な淫行高校生・・。」
「何・・」と灯里。
「嫌がらせだな。」と洋貴。
「灯里生徒手帳は?」と凛久。
「あ、ない!」
「七股の中の誰かが忍び込んで・・。」と大和。
「あ、レインボーマン?」と八朗。
「正確にはレインボーメンね。」と大和。
「きっとそのレインボーメンに恨まれてるんだ。」と八朗。
「こんなのばら撒かれたら大変なことになるよ。」と凛久。
「どうしよう・・。」と灯里。
「他に貼られてないか探しに行こう。」と八朗。
「うん。」
八朗、灯里、茂市、大和が学校へと走り出す。

怪文書をもう1度読もうとする凛久と洋貴に、桜庭朔太郎(織田裕二)が
声をかける。
「おはよう!」
慌てて怪文書を隠す凛久。
「無視・・無視だ無視。」洋貴が歩き出す。
凛久も洋貴のあとをついていくが、気になって振り返る。
「・・・もしかして、見ました?」
「何を?」
「いえ、見てないんならいいんです!」
「一本多い。」
「え?」
「淫行の淫の字の横棒が一本多い。」
「・・・見たんですね!」
「見た。」
「何で勝手に見るんですか!」
「何で勝手にって・・難しい質問だな。」
「何が難しいんですか!勝手に見るなんて、」
凛久の手から紙を奪い取る朔太郎。
「ちょっと!」
「脇甘い!」
「ちょっと返して下さい!!」

校舎の中
「そんなのデタラメなんです!
 ただの嫌がらせなんです!!」
「はー、一般的なコピー用紙だな。」
「まさか職員会議にかけたりするんじゃ・・」
「職員会議?
 職員会議かー。」
「お願いします!そんなことしたら灯里が退学に!」

そこへ、神谷龍之介理事長(小日向文世)率いる教師たちが通りがかる。
「おはようございます。」さりげなく紙を隠す朔太郎。
「おはようございます。
 何ですか?それは。」と神谷。
「え!?」
「何が書いてあるんですか?」と赤木 保則(池田 鉄洋)。
「見せて下さい。」と真山 春佳(吉瀬美智子) 。
「・・・理事長は、紙を食べたことはありますか?」と朔太郎。
「いえ。」
「彼女は食べられるんです。」
朔太郎はそう言うと、紙を丸めて凛久に渡す。
「え・・」
「ほら。」
戸惑いながらも、それを口に突っ込み微笑む凛久。
「・・・楽しそうですね。」
「食べます?」と朔太郎。
「遠慮しておきます。」
神谷たちが立ち去る。

「・・・お前すごいな。」
「どうも!」
「その怪文書書いたやつは、意外と小心者かもしれないな。」
「え?」
「汗をかいた掌の跡がべったりと紙に残ってた。
 その変を屋嶋に聞けば、特定できるかもしれない。」
「なるほど! 
 ちょっと待って。
 汗のことがわかってて私に食べさせたんですか?」
「・・・緊急を要する事態だった。」
「だったら自分が食べたらいいじゃないですか!」
「無茶言うな。ヤギじゃないのに紙なんか食えるかよ。」
「・・・」
「早くしろ。ホームルーム始めるぞー。」
「・・・最低!!」

教室
灯里のプリクラ帳を覗き込む八朗たち。
イエローMAN、グリーンMAN、オレンジMAN、ブルーMAN、パープルMAN。
「うん?6人?レッドMANがいないよ?」と八朗。
「とにかくこの6人の中に犯人がいるんだ。」と灯里。
「これなんか面白そうだな。」と洋貴。
「ちょっと!洋貴!!」と凛久。

「おはよう。」朔太郎が教室にやって来る。
「起立!」
「あ、立たなくていい。」
朔太郎はそう言うと、窓際・一番前の席のいつも寝ている
船木真由(前田敦子)の前に立ち、
アイマスクを外した彼女と一緒に大あくび。
「おはよー。寝てないのか?」
「はい。」
「何で?」
「夕べ、UFOにさらわれました。」
「どんな?」
「どんな?」朔太郎の反応に驚く洋貴。
「なんか、ピーターみたいな。」
「あー!」
「あーって!」と凛久。
「とりあえず顔洗ってこい。」
「はい。」

教室に若葉がやって来る。
「明日はさらわれんなよー。」
「さらわれた?何が?」若葉が生徒に聞く。
「よくわかりません。」
「あ、見学ですか?」朔太郎が若葉に言う。
「柴草先生に見張るように言われてるんで。」

国語の授業中
ほとんどの生徒たちが別の科目を自習中。
「国語の授業中だよー。」朔太郎が貴林 優奈(黒瀬真奈美)に言う。
「ほかの先生だったら何も言いませんけど。」
「そうなの?」
「早退します。」羽菜が席を立つ。
「どこか具合が悪いのか?」
「いいえ。私の志望校は理数系です。
 国語の授業に時間を使うのは無駄です。」
「僕も早退します。」と大和。
「私も。」と優奈。
「僕も。」と茂市。
「あー、わかったわかったわかった。
 わかったから席つけ。」
「数学の勉強許可してもらえるのですか?」と羽菜。
「いいよ。」
「お!勝った!」と八朗。
「ただし、この問題が解けたらだ。」
黒板に何やら書き始める朔太郎。
『八万三千八 三六九三三四七一八ニ
 四五十三ニ四六百四億四百』
「この問題が解けたら、自由に、好きな勉強していいぞ。」
必死に解こうとする生徒たち。
「わかるかな、わかるかな、わっかるっかなー♪」
楽しそうに生徒たちを見渡す朔太郎。

3年生の成績データベースを見る神谷。
羽菜の成績は学年148人中トップ。続いて、大和。
「03416。」と神谷。
「3年4組の内藤です。」と柴草 修平(八嶋 智人) 。
「総合偏差値が2、下がってます。
 志望校を変更させて下さい。」

「柴草先生!」若葉がやって来る。
「ノックぐらいしなさいよ!」
「桜井先生が。」
「また授業してないの?」
「いえ、授業はしているんです。
 あの・・数学の授業を。」
「数学!?」

3年1組の教室に教師たちが押しかける。
「桜井先生。」
「しーっ。」
「しー、じゃない。何やっていらっしゃるんですか?」
「問題解いてます。」
「あなた国語の教師でしょう!これ数学じゃないですか!
 しかもこんなワケのわからない問題を!」
「頭使えばちゃんとわかる問題です。」
「え・・」
問題を見ていた神谷が微笑を浮かべる。
数字を読み上げていく若葉。
「そう!声に出して読んでいくとわかりやすいんだよ。」と朔太郎。
生徒たちも声を出して読んでいく。
「消しなさい。」神谷が真山に言う。
「山道は寒く寂しな一つ家に
 に夜毎身にしむ 百夜置く霜」
「・・・」
「これは短歌だ。」
「すげー!」
「短歌・・」と羽菜。
「てことは・・」と洋貴。
「国語!」と凛久。
「面白い!」と若葉。
「じゃあもう1個!」と朔太郎。
不機嫌そうに立ち去る神谷。
他の教師たちも教室を出ていくが、朔太郎は気にせず黒板に
漢数字を書き連ねる。

休み時間
八朗は灯里を説得しようと試みる。
「ねえ、もう犯人探しなんかするより、今まで貰ったもの全部
 返すなりして、謝って回った方がいいよ。」と八朗。
「何で?何で私が謝らなきゃいけないの?」
「こっちにだって非はあるんだし。」
「私は自分を売っただけだよ。」
「うん?」
「この人たち私を買って喜んでたの。
 女子高生とご飯食べたりして、喜んでたの。
 その代わり私は欲しいものをもらった。
 それのどこが悪いのかな。
 誰も困る人なんていないでしょ。」
「いや・・俺が困る。」
「なんであんたが困るのよ。」
「おかしいよ!そこにはないもん。」
「何がないの?」
「・・・愛とか。」
「愛って・・それ何?どこに売ってんの?いくらすんの?」
「愛は売りもんじゃないよ。」
「売るものよ。
 愛は株と同じで見返りを求めて売り買いするもの。」
「・・・」
「もういい。あんたには何も頼まない。」
そう言い立ち去る灯里。

途中から様子を見守っていた洋貴と凛久が、立ち去る灯里を心配そうに
見つめる。
そこへ朔太郎がやって来た。
「うわー、ここに書いてある通りだな。
 最悪な女だ!
 自業自得ってやつだな。ざまあ見ろだ!」
「これは灯里じゃありません!灯里はこんな女じゃないです。」
八朗は朔太郎が持っていた怪文書を破り捨てる。
「こんな女じゃないって証拠でもあんのか?」
「・・・一緒にご飯食べてると、僕にしいたけをくれます。」
「それ、自分が嫌いなんじゃないのか?」
「電車でおばあさんが立っていると、僕に席を立てって言います!」
「自分が立てよ。」
「ウサギのリンゴで泣いてました!」
「ウサギの?」「リンゴ?」と洋貴と凛久。
「模擬試験の時、灯里に頼まれてお弁当作ったことがあって。」
「そんなことまでしてたの?」と凛久。
「でも、灯里んち両親が二人とも証券会社で働いていて、
 忙しくてお弁当作ってもらったことないんだって。
 運動会の時も遠足の時もだよ。
 で、俺がこう、リンゴをウサギの形に切って持っていったら、
 こんなの初めて。もったいなくて食べれない、
 可愛いね、可愛いねって・・涙流してた。
 だからあいつはよくわかってないだけなんだよ。
 ウサギのリンゴを初めて見た時みたいに、
 愛情ってのが何だかよくわかってないだけなんです。
 だから、だから・・」
「だったらお前がタダでやれ。」
「・・・」
「タダでやるんだ。お前の愛ってやつを。」

屋上
掌に何かを握りしめる灯里。

図書館
八朗が書いたラブレターを読む朔太郎。
『灯里へ
 君の笑顔が好きです。
 君が笑うなら、スーパーボール、鼻に詰める。
 2個詰める。
 君の笑顔は、スーパーヘッドスライディングシャイニングスター。
 君の涙が嫌いです。
 君の涙が止まるなら、ベッドの下のエロ本全部燃やす。
 君の涙は、ウルトラギガントメガマックスブラックホール。
 灯里!愛はここにあるぞ!』

屋上
必死に書いたラブレターを差し出す八朗。
「何?」
「俺の気持ちが書いてあるから。」
「え・・」
八朗は灯里の手に手紙を握らせる。

「お!受け取った!」と洋貴。
「やった!」と凛久。
茂市も心配そうに様子を見守る。

ところが灯里は手紙を読もうともせず破ってしまう。
「からかってんの?」
「からかってなんか・・」
「私はこんなの貰うような、」

「おい!ふざけんな!」3人が飛び出していく。
「なに?見物してたわけ!?」
「ハチがどんな思いでこれを!」と洋貴。
「いや・・俺は・・いいから。」
「悪い?」灯里が洋貴に言う。
「見損なったよ。
 お前みたいな女顔も見たくねー。」
「・・・ああそう。」
その場を立ち去ろうとすると、朔太郎が立っていた。
「なんですか?」
朔太郎は灯里が破り捨てた手紙を拾い集めていく。
「一生懸命書いたんだ。読んでやってくれよ。」
朔太郎が手紙を差し出すが、灯里は無視してその場を去る。

食堂
「何その顔。
 せっかく先生の言うとおり学校に来てやったのにさ。」
川辺英二(山本裕典)が若葉に言う。
「変なこと言うから。」
「え?・・ああ、あれね。結婚!」
「しーっ!教師をからかうのもいい加減にして。」
「結婚して。」
「しらす丼食べながらプロポーズされたの、初めてよ。」
「プロポーズされたことあるんだ。」
「・・ないけど!」
「本気だよ。」
「は?」
「俺と結婚してさ、・・・俺を、助けてよ。」
そう言い立ち去る英二。
「え・・何?」

その頃、神谷龍之介理事長たちに怪文書が発覚。
それを灯里に突きつける神谷。
「違います!それは・・いたずらです!」と八朗。
「いたずらだとしても、君に疚しいことがあるから書かれるんじゃないのかな。」
「・・・」
「来なさい。」
「あのー、
 それ事実じゃありません。真っ赤な嘘です。」と朔太郎。
「何言ってるんですか。あなたにはわからないでしょう?」と若葉。
「わかるんだな、これが。」
「どうして?」と神谷。
「僕が書いたものだからです。」
「・・なんの為に?」
「教材です!
 今の世の中いつどんな目に遭うかわからないじゃないですか。
 こんな根も葉もない噂を受けたとき、
 でもお前らはどう対処するのか!
 さあみんなで考えよう!
 そのための、教材です。」
「・・・」
「あ、お前、今日掃除当番だったよな。
 教室に戻れ。」
「・・・」黙って従う灯里。

職員室
「推薦状を書きましょう。他の学校へ行って下さい。」
柴草が朔太郎に言う。
「・・・は?」
「出てって下さい。」と神谷。
「ほら、出てって!」と柴草。
「違います。櫻井先生以外の方は退室して下さい。」

「どうぞ、お掛けになって。」
「失礼します。」
「・・・あなたは嘘をついている!」
「闇雲に処分しても、彼女は救えません。」
「ここは、青少年を更生させる施設ではありません。
 勉強を教える場です。」
「勉強を教えるだけが学校だとは思っていません。
 子どもを、大人に育てることも必要だと考えております。」
「彼らを一つでも上の大学に入れることが、私達の仕事であり、
 教師が生徒に持つ、愛情の形です。
 もっと、子どもたちを愛して下さい。」
「・・・」
「受験の妨げになる、生徒や教師、ここに置いておくわけにはいきません。
 もう1度伺います。
 これは、誰が書いたんですか?」
「私です。」
「・・・」
嘘を追及する神谷に、朔太郎は断固として口を割らなかった。

職員室を出てきた朔太郎を、灯里が待っていた。
「なんだまだいたのか?」
「何であんな嘘ついたんですか? 
 あなたは何もしてないじゃないですか。」
「そうだっけ?
 あー、そっかそっか。俺が書くの手伝ったのはこっちの方だったっけな。」
朔太郎はそう言い、ポケットから八朗の手紙を取り出して渡す。
「あ・・一番大事なの忘れてた。」
胸ポケットから取り出した紙切れには、
『灯里 愛』
と書かれている。
「読めません。こんな字知りません。」灯里はそう言い立ち去る。

渡り廊下をメールしながら歩く灯里。
「どこ行くの?」と八朗。
「別に。」
「あー、俺8番目でいい。
 だから、灯里の、一番、好きな人をちゃんと見つけて、ね。」
「・・・」
「もしかしているの?」
「・・・」
「フラれて、ヤケになったとか。」
「・・・キスしてあげようか?」
「・・・」
「私のこと好きなんでしょう?してあげてもいいよ。」
キスしようとする灯里を突き放す八朗。
「痛い何すんのよ。」
「いや・・もったいないよ!
 そういうのは・・そういうのは大事な時に取っておかなきゃ 
 ダメなんだよ!!」
「・・・」
「な、灯里・・。」
「なんかもう疲れちゃった。」
「灯里・・」
「来んな!」

花の匂いを嗅ぐ朔太郎。
「その花、高いのよ。」と長谷部校長(戸田恵子)。
「ふーーん。」
「先生。一人の生徒を庇うために、あなたにいなくなられては困るわ。
 本当のこと、話して。」
「・・・嫌です。」
「嫌ですって?」
「俺がここに来る前にいたとこじゃ、花に値段なんてなかった。
 花はただ、そこに咲いているものです。
 買ったり、・・売ったりするものじゃなかった。」
「・・・」
「彼女だって、はじめはただそこに咲いている花だったんです。
 誰かが水をやらなきゃ、枯れてしまう。」

防波堤に腰掛け、楽しそうに遊ぶ親子連れを見つめる灯里。
そんな灯里の前に高級車が止まる。
「お待たせ!」
黄色いストラップをつけた、イエローMAN、河端正吾(要潤)だ。
「今日はさ、うちの別荘に来ない?」
「別荘?」

海沿いのカフェ
「あいつ酷いよ!」と八朗。
「ハチ・・」と洋貴。
「やっと気づいたか!そうだよ。あんなのさっさと忘れちまえ!」と茂市。
「うるさいな。もう集中出来ないでしょ!」と凛久。
そこへ、朔太郎が顔を出す。
「おー、偶然だな!
 いつもここで勉強してんの?」
「私の実家です。」
「ヤキソバ!」
「私に注文しないで下さい! 
 ていうか、うちの店にヤキソバとかありませんし。」
「え?どうして海の家にヤキソバがないの?」
「海の家じゃありません!カフェです!」
「自分でメニュー見て下さい。」と八朗。

河端のリゾートマンション
「すごい。」
「ここから海見えるよ。」
「うわ!綺麗!」
河端は部屋に鍵をかけ・・。

カフェ
鉄板でやきそばを作り始める朔太郎。
「勝手にそんなもの出してこないで下さい!」と凛久。
「屋嶋どうした?」
「いや・・わかりません。もう関係ないんで。」と八朗。
「・・あっそう。」

河端のマンション
「今日はこれを返そうと思って。」灯里がバッグを差し出す。
「どうして?返さなくたっていいよ。」
「やっぱ、こういうの良くないなって。」
「他の男に言われたの?」
「一番信頼している友達から言われました。」
「・・・大丈夫だよ、大丈夫。
 だって僕は、他の誰よりも君が好きなんだから。」
「・・・あ・・ありがとうございました。」
部屋を逃げ出そうとした灯里は、キッチンに自分の学生証を見つける。
そんな灯里に歩み寄る河端・・。

カフェ
やきそばを美味しそうに食べる朔太郎。
「絶対に食べちゃダメだからね!!」と凛久。
そこへ、羽菜と大和がやって来た。
「これ、物理のノート。」
「ありがとう!何か飲んでく?」
「ううん。これから塾のテストがあるからすぐ帰る。」

その時、八朗の携帯が灯里の電話を着信。
「灯里・・」
「あんな女無視無視!」と茂市。
「わかってるよ。わかった。」

河端家
トイレに逃げ込んだ灯里。
「何で出ないの・・」
「開けろ!!開けろ!!」河端が乱暴に戸を叩く。
「お願い・・助けて・・助けて・・」

灯里からの電話を気にしながらも無視する八朗。
「そんなものか。」と朔太郎。
「・・・」
「お前の気持ちっていうのはそんなものだったんだ。」
「僕は・・裏切られたんです。」
「灯里はハチを裏切ったんだ。嫌になるの当たり前だろ。」と茂市。
「関係ないな。」
「裏切られても関係ないですか?」
「ああ。裏切られても関係ない。」
「裏切られても裏切られても?」
「裏切られても裏切られてもだよ。」
「裏切られても裏切られても裏切られてもですか?」
「裏切られても裏切られても裏切られてもだよ。」
「そんなのはバカです。」
「バカでいいじゃない。
 本気の気持ちっていうのは、バカになるってことだよ。
 駆け引きも見返りも、カッコつけたり計算したりもない。
 ただ、まっすぐぶつかっていく。
 本気で好きになるっていうのは、バカになるってことだよ。」
「・・・」
「胸張って、バカになれ!」
「・・・」

そこへまた、灯里からの電話。
「灯里?」
「助けて!!」

ゴルフクラブでドアを壊そうとする河端。
「ハチ!助けて助けて。閉じ込められてる!」
「え・・閉じ込められてる?
 あの・・今どこにいるの?
 葉山の、オーシャンパレス503ね。わかった。すぐ行くから!
 絶対動いちゃダメだよ!」

「いつものパターンなんじゃないのか?」と洋貴。
「また裏切られるんじゃねーの?」と茂市。
「・・・うん。それでもいい。
 ・・・それでもいい。」
八朗がカフェを飛び出す。
そんな八朗の姿を笑顔で見送ると、朔太郎は胸に手を当て、そして目を閉じ・・・。

そっと目を開けた朔太郎は・・。

「ハチ行っちゃったよ!!」と凛久。
「俺たちも行こう!!」
「羽菜はテスト頑張って!」と大和。

リゾートマンションに着くと、八朗や洋貴たちはエレベーターで目的の階へ。
だが、朔太郎は降りずにさらに上へと行ってしまう。
八朗たちは、鍵のかかった部屋の前で、ただ灯里の名を叫ぶばかり。

部屋の中では、河端がついに灯里に覆いかぶさろうとしていた。
その時、窓ガラスが破られ、櫻井が転がり込んできた。
櫻井は、屋上からロープを使って部屋に来たのだ。
驚く河端。
「イッテー。」
そう言いながら立ち上がると、河端に歩み寄る朔太郎。
「助けにきてくれたの!?」と灯里。
「いや。」
「え・・」
「自分でそこから降りて帰れ。」
「えぇ!?」
「俺知ーらない。」
「ちょっと待ってよー!!」
動揺する灯里に朔太郎は、玄関の外で叫ぶ仲間たちの声を聞かせた。
「この音の値段いくらだ。」と朔太郎。
「え・・」
「この声。いくらで買う?」
「・・・」
「心や愛に値段つけられるんだったら、あいつらにも値段つければいい。
 100円か?千円か?1万円か?」
「・・・」
「違うだろ?
 人の心は売り物じゃない。
 世界中の金かき集めたって、あいつらの心を買うことは出来ない。
 人の心をさ、何かに変えるなんて、出来ないんだ。
 ウサギのリンゴみたいにさ。」
「・・・」
「お前が本当に欲しいのは、どっちだ?
 時計やバッグか?
 ウサギのリンゴか?」
「ウサギのリンゴ・・。」泣きながら答える灯里。
「あいつらの声に、あいつらの心に答えてやれ。
 心に答えられるのは、心だけだ。」
「洋貴・・凛久・・大和・・茂市・・
 ハチ・・。」
灯里が、仲間たちの思いに気づいた時、朔太郎は玄関を開ける。
すると八朗たちがなだれ込み、灯里を取り囲む。
「さあ帰るぞ!」と朔太郎。
「待てよ。」と河端。
「・・・」
「これ持ってけよ。もっといろいろ買ってやるからさ。」
「なんだよ!!こんなヤツ!!」
八朗が向かっていこうとするのを必死に止める灯里。
「私が悪いの。
 私が悪い・・。
 ・・・申し訳ありませんでした。」
素直に頭を下げて謝る灯里の姿に、朔太郎は部屋を出ていく。


テスト直前、思いつめた表情を浮かべる羽菜。

学校
「櫻井先生から、連絡がありました。
 屋嶋灯里を中傷する文書を書いたものが見付かりました。
 何度か食事をしたことがある相手だそうですが、
 少なくとも、屋嶋灯里は校則を破ったことはないようです。」と長谷部校長。
「・・・」
「屋嶋灯里には、今後勉強に力を入れるよう、私からも言い聞かせますので。」
「いいでしょう。」と神谷。
「ありがとうございます。」
「桜井先生というのは実に、生徒思いの方ですね。」
「ええ。
 この学校が抱える、あの問題が発覚しても、
 彼ならば、全力で生徒を守る、」
「発覚などしません!」
「しかし・・」
「私がさせません。命に変えて。
 その時わかってくれるでしょう。
 本当に、生徒思いなのが、誰だったのか。」
「・・・」

その頃、若葉は長谷部の部屋で、戦車の前に立ちはだかる男の写真を目撃。

凛久の店
テラスで2ショットの八朗と灯里を覗き込む男子三人。
「やめなよ!趣味悪い!」凛久が叱る。

店の中では朔太郎がもんじゃを焼き始めている。
「何してるんですか?」
「もんじゃ!」
「もう嫌!!もう、カフェなのにーー!!」

プールサイド
「返事しなきゃ。」と灯里。
「返事?」
八朗の手紙を開く灯里。
「そんなの捨てなって。」
「ダメ捨てない。
 飾っておく。額に入れておく。」
「いいから!」
奪い返そうとする八朗の手をつなぐ灯里。
「好きになってもらうのも、いいもんだね。」
「・・・」
「・・・私、八朗となら、」
その時、灯里の手から何かが落ち、プールの底へと沈んでいく。
それは、洋貴が失くしたと言っていたものだった。
「・・・そうかー。灯里の一番はアイツだったかー。」
「・・・」
「そうか。」
「・・・」灯里の瞳から涙がこぼれる。
「なんで、洋貴に告白しないの?」
「あいつが私のこと・・好きになると思う?」
「いや・・そんなの・・」
「わかるよ。・・わかる。」
「・・・ごめんね。
 気づいてあげられなくてごめん。」
「バーカ・・泣かすこと言うな。」
「ごめん。」
「大丈夫。好きじゃなくなるように、努力してるから。
 ただの友達に戻れるように、努力してるから。」
「無理しないの!好きは、努力してなくなるものじゃないし。
 好きは、努力してなるもんじゃない!
 ・・・ない!」
そう言い顔を見せる八朗の鼻には、スーバーボールが2個ずつ!
大笑いしあう二人。

灯里が店の中に戻っていく。
灯里がもんじゃを食べ始めると、みんな争うように食べ始め・・。

プールサイド
一人になった八朗に朔太郎が近づく。
「うわっ!」八朗を脅かす朔太郎。
「びっくりしたー!!」
「あれ?お前靴どうしたよ。」
「慌ててて、多分さっきの所に忘れちゃいました。」
「バカだなー。俺がプレゼントしてやるから。」
「やった!本当ですか?」
「1個な。」
「何で1個なんですか。一足にして下さいよ。」
「じゃあ3個。」
「何で3個なんですか。奇数じゃないですか。」
「右右右と左左左。
 どっちがいい?」
「うーん、いやだから履けないでしょ。」
勢いあまって朔太郎は八朗をプールに落としてしまった!

スーパー
買い物をして帰ろうとする若葉は、店の中に川辺英二を発見。
「うわっ!」
英二を脅かす若葉。
若葉の姿に驚いて持っていた商品を隠す英二。
「何よ。そんなに驚くことないじゃない。
 ・・・」
英二が買っていたのは、粉ミルクなどの赤ちゃんグッズ。
慌てて店を出る英二を追いかける若葉。
「ねえ!ちょっと待ってよ!何でそんなもの買ってんのよ。」
すると英二は若葉を抱きしめキスをし・・。
不可なものを除外していて、残ったものをいかにありそうにそれが真相でござる―柯南道尔
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太陽と海の教室 Episode 3

『死ぬな!お兄ちゃん まさかの船上大手術』

生徒たちの成績をパソコンで調べていく理事長の神谷龍之介(小日向文世)。
櫻井朔太郎(織田裕二)が担任するクラスの生徒、川辺英二(山本裕典)の成績が3年生になってから急落していた。
「2年の3学期まで常に10位以内に入っていた成績が、
 3年になってから落ち続け、今回は100位以下となりました。」
「ええ・・」と副担任の榎戸若葉(北川景子)。
「欠席も増えましたし。
 日ごろの生活態度はまるで不良だ!」と柴草(八嶋 智人) 。
「確か、父親を事故で亡くしていますね。」と真山(吉瀬美智子)。
「それは一昨年のことだから成績には関係ないでしょう。」と柴草。
英二にキスされたことを思い出す若葉。
「彼は、我が校全体の偏差値に影響を与える重要な人材です。
 早急に原因を突き止めて更生させる必要があります。」と神谷。
「はい。」
「これは私からの手紙です。彼に渡してください。」
「はい。」


放課後、若葉は根岸洋貴(岡田将生)、白崎凛久(北乃きい)に案内を
させて英二の家へ。
「何で俺たちが川辺んち案内しなきゃいけないのさ。」と洋貴。
「ちょっとちょっと待って!一人にしないでよ。」
そこへ、妹・ユウカ(大森絢音)、弟・リョウタ(中村柊芽)と
赤ん坊を抱っこした英二が買物から帰って来た。

川辺家
部屋中散らかし放題で、座る場所もない。
「あなたたち、弟さんと妹さん?」と若葉。
若葉を無視して遊びまわる妹弟。
「ちょっと、逃げないで!」
「人間の言葉通じねーんじゃない?」と洋貴。
「だから子どもは嫌いなのよ!」
「・・・なんか用?」
「いや。用っていうか・・」と洋貴。
「ごめんね急に。」と凛久。
「今日も学校来なかったでしょ。
 これ、理事長から。」
若葉が神谷の手紙を差し出す。
「お母様は?ご挨拶したいんだけど。」
「無理。」
「無理って・・
 副担任として最近のあなたの成績のことを、」
「お母さんありが島だよ。」と妹。
「ありが島?」
「ありが島の病院。
 胸の病気で春から入院してるの。」
「え・・ってことは・・」
「この4ヶ月間、俺たち4人でここに住んでる。」
「え・・あなた一人でこの子たち全員の面倒を見てるってこと?」
「・・・」
「預かってくれる親戚とかは・・」
「4人同時に預かってくれる親戚なんていないよ。
 よし、飯にするぞ。」
「はーーい!」
ユウカは赤ん坊の世話を、リョウタは兄の手伝いを始める。
そんな様子を呆然と見詰める若葉たち。

次の日、朔太郎が3年1組で授業を行っていると、
昨日、英二の家で若葉たちが見た2人の子供が乱入。
「先生の子どもですか?」と朔太郎。
「違います!私まだ結婚もしてません!」
「結婚してないのに・・あら、難しい問題だな。」
「問題じゃありません!うちのクラスの川辺君の、」
「ああ!川辺と先生の!・・あら、さらに難しくなっちゃった。」
「あ、待ちなさい!」子どもたちを追い回す若葉。
「君たち何してるの?お兄ちゃんは?」と凛久。
子どもたちは無視して教室内を走り回る。
「コラ!人の話を聞け!聞こえないのか!」と洋貴。
「子どもには子供の言葉ってのがあるんだよ。」と朔太郎。
「子どもの言葉?」と凛久。
「ウンチ!」
朔太郎の言葉に子どもたちが振り返る。
「オナラ!」
子どもたちがにっこり笑う。
「おーい、どうしたんだ。ウンチでも漏らしたのか?」
「違うよーー!」
子どもたちが朔太郎に駆け寄る。
「そうなのか。じゃあどうしたんだ?」
「小雪が連れて行かれたの。」
「小雪?」
「え・・あの赤ちゃん?連れていかれたの?」と若葉。
「東京のおじさんが連れてったんだよ。」
「え・・それでお兄ちゃんに知らせにきたの?」
「お兄ちゃん、知ってるよ。」
「お兄ちゃん僕達がいると困るの。」
「・・・」
「私達、勉強の邪魔なの。」
「・・・」

その頃、英二は理事長室にいた。
「よく、連絡してくれたね。」と神谷。
「こんなに期待されているとは思わなかったんで。」
神谷の手紙を見つめる英二。
「君は、大事な生徒だ。
 道を踏み外してほしくないんだよ。」
「・・はい!」
「それで、どうした。」
「理事長の仰る通り、児童相談所の人に連絡して、
 一番下の妹は東京の親戚に預けました。
 あとの二人も今日、仙台の親戚に預けます。」
「そうか。
 じゃあ君はもう今日から、」
「受験勉強に集中できます。」
「それは良かった。」

英二が教室に戻ってくる。
「お兄ちゃん!!」妹弟が英二に駆け寄る。
英二はクラス全員の注目を浴び・・。

優奈と圭悟が席を立つ。
「どこへ行くの?」と若葉。
「他の先生を読んできます。」
「このままじゃ授業にならないんで。」
「あ、授業は今からする。」と朔太郎。
「出てってもらえるんですか?」と優奈。
「うん?」
朔太郎は子どもたちにチョークを割って一つずつ渡す。
「はい。
 授業を頼む。」
子どもたちは大喜びで黒板へ。
「ちょっと話そうか。」朔太郎が英二に言う。
「ちょっと!あなたが出ていくんですか?」
「先生の言うことよーく聞くんだぞ。」
朔太郎はそう言うと、英二を連れて教室を出ていく。
生徒たちは黒板に落書きを始める子どもたちを見つめ・・。
「この子たちが先生!?」
「帰っていいのかな・・。」
真由だけは、子どもたちの落書きをノートに写していく。

屋上
「あの子たちは親戚に預けることにしたのね。
 さすが理事長。的確な指示じゃない!」と若葉。
「ああ。」
「お前それで本当に納得してんのか?」と朔太郎。
「え・・
 仕方ないんだ。」
「子どもたちなんて言ってた?話し合ったんだろう?」
「先生は俺に犠牲になれって言うのか?
 このままじゃ俺、妹たちを嫌いになっちまうんだよ!」
「・・・」

教室
リョウタは田幡八朗(濱田岳)らにカバンの中身を披露。
おもちゃやキャンディー、釣り針などを見せていた。

ユウカは、勉強する羽菜(谷村 美月)と大和(冨浦 智嗣)を覗き込む。
「何これ?」
「数学。
 ジャガイモ1個と、トマト2個足したら何個ですかとか知ってる?」と大和。
「知ってるよそれくらい。
 何を計算しているか聞いてるの。」
「何かな・・」顔を見合わせる大和と羽菜。
「お兄ちゃんたち変だね。
 何かわからないものを計算しているの?」
「・・・」

屋上
「みんなが勉強している間、俺は野菜の値段を覚えてた。
 みんなが前に進んでいる間、俺だけ止まってた。
 俺、あいつらの顔見て思ったんだ。
 ・・・ウザイって。」
「本当にそれでいいのか?」
「・・・はい。清々しました。」
「ふーん、でもさ、」
「もう戻っていいわ。」
若葉の言葉に、英二は会釈をし帰っていく。
「何であんなこと言うんですか!」
「あいつ本当に納得してんのかなー。」
「何なんですか、あなた!!」

教室
「これは、微分積分。」と大和。
「それは、トマトをどうするの?」
「トマトを、だからこの、」
「この問いは、関数の増減だから、まずトマトの面積を、
 ・・違うか。
 えっと、トマトはどこにあるの?」
ユウカの問いに戸惑う二人。
そこへ英二が戻ってきた。
「ユウカ、リョウタ、帰るぞ。」
「バイバーイ!」
三人が帰っていく。

「彼も苦労してるんだね・・。」と灯里(吉高由里子)。
「一言言ってくれればいいのにな。」と洋貴。
「あの子たち預けられちゃうのかな。」と凛久。
「だよなー、心配だよな。
 はい!はい!」
朔太郎が何かを配っていく。

「ここから、ここまでがトマトだ。」と大和。
「違うよ、それじゃあトマトはこの教室ぐらいの大きさになるよ。」
大和と羽菜が天井を見上げる。

理事長室
「4時に、児童相談所の方が妹弟を引き取りにいらっしゃるようです。」と神谷。
「では、私共が立ち会って、」と赤木(池田 鉄洋)。
「いや。彼は、心が弱い。
 心変わりした時には、説得の必要があります。」と神谷。
「そんな・・生徒一人のために理事長自ら行かれることは、」と柴草。
「一人の為に動く理事長は、愚かですか?」
「感動のあまり・・」ハンカチで目を覆う柴草。

川辺家
「ユウカ。リョウタ。
 今日は特別に、お前らの好きなロールキャベツ作ってやるからな。」
「特別って?」とユウカ。
「え・・」
インターホンがなる。

やって来たのは、洋貴、凛久、八朗、灯里、茂市だった。
朔太郎からエプロンを預かった彼らは、家事の手伝いにやって来たのだ。
もちろん朔太郎も一緒。
子どもたちと真剣に遊ぶ朔太郎。
「先生なのに・・」
「踏まれてる!」
「先生なのに・・」
「食べさせてもらってる!」

怪獣になって子どもたちを追い回す朔太郎の前に英二が立ちはだかる。
「・・おぅ。」
「何なの!?」
「いいからお前、部屋行って勉強してろ。」
「今更こんなことされたって俺は、」
そこへ、神谷たちがやって来た。
「あれ、みなさん。手伝いに来てくださったんですか?」と朔太郎。
「そんなわけないでしょ。
 理事長が直々に、あなたの様子を見にきてくださったのよ。」と若葉。
「まだ、ちょっと彼と話が終わってないんで。」と朔太郎。
「冷静になって考えて下さい。
 どちらが彼にとって幸せかということです。
 確かに、家族は一緒にいた方がいいと思います。
 でも今回は事情が事情なんです。
 あなたはそうやって自分勝手で古めかしい正義感を振り回して、
 彼を混乱させているだけなんですよ。」と若葉。
「・・・」
「川辺君はもう限界なんです。
 彼はまだ18歳なのに、たった一人で頑張ってきたんですよ。」
「まだ18じゃない!・・・もう18だ。」
「え?」
「そうだな。確かにお前は一人で頑張ってた。
 だけど、川辺、辛いことだけだったか?
 妹たちの面倒見るのって、辛いことだけだったか?
 今を・・・いつか後悔することはないか?」
「・・・俺・・」
「うん。」
「児童相談所の方がいらっしゃいました。」
「・・・俺、」
「うん。」英二が言おうとする言葉を待つ朔太郎。
何か話そうとする英二の肩に手を置く神谷。
「君は未成年だ。
 4ヶ月もの間ここに暮らしてきたってことは、社会的問題だ。
 このままでは君は、将来を台無しにすることになる。」
「・・・
 今、妹たちを・・連れてきます。」
「川辺!」と朔太郎。
「帰って下さい。
 帰って下さい!!」

子ども部屋
「なあ、仕方ないんだ。こうするしか他に、」と英二。
「あったー!
 せーの、英二兄ちゃん受験頑張ってね!」
妹弟が英二に片瀬江ノ島神社の絵馬を渡す。
「・・・」
「仙台にも神社あるかな。」とユウカ。
「また送るね!」とリョウタ。
妹弟をぎゅっと抱きしめる英二。
「お兄ちゃん?」
「兄ちゃんの作る弁当不味かったろ。」
「うん。まずかった。」「まずかったー。」
「気に入ってた、セーターも縮めちゃったし。」
「縮めちゃった!」
「風呂も、三人いっぺんじゃ狭かったしな。」
「狭かったー。」
「・・・ごめんな。」
「でも楽しかったよ。」「楽しかったー。」
「兄ちゃんもだ。」
英二は妹弟の笑顔を見つめ、そしてもう1度抱きしめる。

そこへ、洋貴たち5人が顔を出す。
「で、なにか・・俺たちに出来ることあるか?」と洋貴。
「・・・」

若葉が子ども部屋をノックする。
「早くしろ!」と小声が聞こえる。
ドアを開けてみると・・みんなを逃した茂吉一人。
英二たちはカーテンを伝って外に脱出した後だった。
「理事長!!」

「ねえどうする?どこ行く?」と凛久。
「うち来てもいいぞ。」と洋貴。
「いや・・行きたいところがあるんだ。」

学校 会議室
「大変、申し訳ありませんでした。 
 あの子どもたちは、我々が責任を追って送り届けます。」
神谷たちが児童相談所の担当者に頭を下げる。
「よろしくお願いしますね!」「失礼します!」
担当者たちは怒って帰っていく。

「あなたが、川辺英二をけしかけたそうじゃないですか。 
 こんなことが公になったら、我が校の責任問題に発展、
 ・・・彼らに何かあったら、あなたはどう責任を取るつもりですか!?」と柴草。
「私、探してきます。」と若葉。
「探す必要はありません。
 所詮は子供のすること。どこに行ったか想像はつきます。
 母親が入院している病院です。」と神谷。
「恐らくフェリーに乗って、病院のあるありが島に向かったんでしょう。」
「じゃあ私、フェリー乗り場に、」
「既に、赤木先生方が向かいました。
 フェリー乗り場で彼を捕まえようとしてくれています。」と神谷。
「捕まえる!?」と朔太郎。
「何か。」
「どうしてそういうことするんですか!」
朔太郎が飛び出していく。

学校のバイクにまたがる朔太郎。
「どこ行くんですか!?」と若葉。
「追いつめちゃダメなんだよ。」
「彼らは逃げているんですよ!」
「追うから逃げるんだ。」
「え?」
「逃げてるやつには居場所作ってやんなきゃ。
 追いつめちゃダメなの!」
そう言いバイクを走らせる。

「ちょっと!!もう!!」
若葉の前に長谷部杏花(戸田恵子)が運転する車が止まる。
「乗って!」

フェリー乗り場
「もうすぐお母さんに会えるからな。」と英二。
「お母さんに会ったあとはどうするの?」と凛久。
「小雪も連れ戻しに行って、そのあとは・・
 就職するかもしれない。
 じゃあ。」
「戻ってきたら連絡しろよ!」と洋貴。
「お手伝いしに行くからね!」と凛久。
「気をつけてねー!」と八朗。
「お兄ちゃんの手離しちゃダメだよ!」と灯里。

英二たちを見送った洋貴たちは、赤木たちの姿を見つける。
「どうする!?」

フェリーに乗ってきた教師たちに気づいた英二は、
妹弟を連れて、立ち入り禁止区域に姿を隠す。

英二たちを心配して洋貴たちもフェリーに乗る。

禁止区域の奥へ奥へと進んでいく英二たち。

長谷部の車の中
「川辺君たちに何かあったらあの人のせいよ!
 あの人に責任取らせるべきよ!」と若葉。
「責任ねー。
 責任って何だろうね。」
「え?」
「うしろ。」
若葉は後部座席から封筒を取る。
その中には、朔太郎の写真が入っていた。
「コソコソ盗み見しなくても、見ていいわよ。」
「別にコソコソなんて・・。
 ・・うそ!この人すごいエリートじゃない!」

『櫻井朔太郎 39歳
 昭和43年10月6日
 出身地 神奈川県 血液型 O型
 22歳 東京大学経済学部経営学科首席卒業
 22歳 スタンフォード大学経営大学院入学
    大学院でも経営学の勉強を続ける
    スタンフォード大学経営大学院卒業
    MBA取得

 可能言語 英語・フランス語・中国語
      スペイン語・ドイツ語(日常会話程)』

「エリート商社マンだったのよ。
 もと商社マンの高校教師。
 エネルギープロジェクトで滞在していたアフリカで転職したの。
 それも、内戦がもっとも激しいと言われていた場所で、転職したの。
 教師に。
 ネクタイ外して、地位も名誉も経歴も全部投げ打って。
 村の小さな学校で、子どもたちに勉強を教えてたの。」
「何で?でも何でそんなことを・・」
「ありがとうを交換したんだって。」
「ありがとうを、交換・・」
「ある時ね、学校も無い小さな村で、道案内をしてくれる男の子と
 知り合ったの。
 その子の名前は、アミーン。
 櫻井先生、ある時、彼にお礼を言ったんだって。
 そしたら、アミーンは逆に聞き返してきたの。
 日本語でお礼は何て言うんだって。
 櫻井先生は答えた。ありがとうと。
 それ以来アミーンは、何度も何度もありがとうって
 繰り返し言うんだって。
 まるで宝物でも見つけたみたいに。
 どうしてその言葉が気に入ったんだ?櫻井先生は聞いてみた。
 するとアミーンは、こう答えた。

 僕は多分、一生この国から出られない。 
 だけど、海の向こうの言葉を知っている。
 僕は多分、この国で死ぬだろう。
 だけど、海の向こうの言葉を知っている。
 ありがとうと言うと、海を渡る魚になれた気がする。
 ありがとうと言うと、空を飛ぶ鳥になれた気がすると。

 櫻井先生は思ったの。
 そうか・・そうなのか。
 それが勉強をするということなのか。

 そして彼は、その村で、学校の先生になった。」
「じゃあどうして?
 どうしてそんな人が、日本の高校で教師をすることになったの?」
「去年・・アミーンが死んだの。
 18歳になった彼は、戦場で傷を受けて村に帰ってきて・・亡くなった。
 櫻井先生の腕の中で、ありがとうって言いながら・・。
 その時、亡くなった彼と櫻井先生のことを、
 通りすがりに携帯のカメラで写真を撮っている者がいた。
 死んだアミーンと同じ18歳。
 日本から訪れた、高校生だった。
 櫻井先生はこう言ってたわ。
 僕は不幸だと言われる子供たちを大勢知ってます。
 だけどある意味で、日本の子どもたちは今、
 世界中のどんな子どもたちよりも、哀れなのかもしれません。
 そして彼は、日本に帰って来た。」

長谷部の車がフェリー乗り場に到着する。
車から飛び下りる若葉。
「若葉!
 櫻井先生は、むやみに反対しているわけじゃないと思うのよ。」
「・・・」
若葉が船へと走り出す。

若葉が船内に行くと、教師たちが洋貴たちを問い詰めていた。
「どうしてお前らがいるんだ!」
「川辺君は?」
「出航してしまいますよ!!」と若葉。
「この船に乗ってないんじゃないんですか?」
「じゃあ一体どこに・・」
「あ!!」
朔太郎が岸に向かって逃げろと手を振っている。
「いた!!」
「櫻井先生!何してるんですか!?」
「いや別に。」
「川辺を逃がしましたね!!」
「いいえ。」
「うそ臭い!やられた!!」
教師たちは慌てて船を下りていく。

「あんたたちも降りて!」と若葉。
「何探してるんですか?」と凛久。
「いや川辺。」と朔太郎。
「え!?あいつ乗ってんの?」と洋貴。
「さっきそこで拾った。」
朔太郎はおもちゃのピストルの弾を見せる。
「じゃあ、さっき港に向かって手振ってたのは?」
「あれ手の体操!」
「あ、ちょっと!!」
その時若葉は船が出港したことに気づく。
「えーーーーっ!嘘ーーーーっ!!」

船内、英二たちを探して回る朔太郎たち。

立ち入り禁止区域
暑さでぐったりする妹弟たち。
「やべ・・もう、いいかな。
 よし、行こう。」
歩き出した時、リョウタはおもちゃのピストルを落とし、
高熱危険区域に入り込もうとする。
「リョウタ!!」
リョウタを庇ったとき、熱風にやられ倒れこむ英二。
そんな英二に機械が倒れ、英二は足を挟まれてしまう。

朔太郎は立ち入り禁止区域に気づき、そこへ入っていく。
凛久と洋貴が後に続く。
奥へ奥へと進み、重い扉を開けたとき、ユウカとリョウタが立っていた。
その奥には、機械に挟まれた英二が!
機械をどかそうとする朔太郎たち。
「待て!
 動かすな!
 今こいつを動かしたら大量出血する!」
「え・・」

船員たちが医者を探すが、生憎船には乗っていなかった。
「到着先に救急車を待機してもらっています。」
船員が若葉にそう話す。
「ごめんなさい・・。」

「大丈夫よ。お兄ちゃん、絶対大丈夫だから、
 上で待ってなさい。」
若葉は妹弟たちにそう言い、灯里に上に連れていかせる。

「我慢出来る?
 むこうの港に着いたら救急車が待っているそうだから、
 それまで待って。」と若葉。
「待てない!」と朔太郎。
「え・・」
「これ以上圧迫が続くと、体が持たない!
 このまま放っておいても、血流が滞って、大量の出血につながる。」
「だったらどうすれば・・」
「お前こっち、お前こっちに回れ。」
「はい!」
「止血するからガーゼと消毒用意してくれ。」
「はい!」
リョウタのカバンを探る朔太郎は、釣り針と釣り糸を手に取る。
「何をはじめる気ですか!?」と若葉。
「こいつをどかす。」
「だってこれを動かしたら川辺君の足に刺さったのが抜けて、」
「大量の出血が起こる。」
「だったら抜いちゃ危険じゃないですか!」
「そん時は縫合する。」
「縫合!?」
「まさか・・」と洋貴。
「手術!?」と凛久。
「そうだ。」
「バカなこと言わないで下さい!
 あなた医療の免許持ってんですか!?」
「いや。」
「じゃあ医者でもないのに手術なんて出来るわけないでしょ!
 素人がそんなことして、もし何かあったらあなた、
 どう責任を取るつもりなんですか!?」
「責任?」
「責任です!私はそんな責任取れませんよ!」
「責任っていうのは何かあってから取るもんじゃない!
 何かが起こる前に、動くことだ!
 誰もやりたがらないことはあるよ。
 だけど誰もやらないことは、誰かがやらなきゃいけないんだ。」
「・・・」
「手伝って。」
「私にはそんなこと・・できません。」

「今出してやるからな。」朔太郎が英二に言う。
「お願いします・・」
「麻酔はないぞ。」
「もう充分痛いんで・・」
朔太郎は自分の胸に手を置き、拳を握り締め、そして目を閉じ・・
朔太郎が目を開く。
「始めるぞ。
 いいか、1、2、3!
 慌てるな。バランス取って!
 抜けたら、すぐに傷口強く抑えろ。」
「はい!」
「よし、いまだ!」
機械は英二の足から外れない。
朔太郎は機械がボルトで止められていることに気づく。
「スパナはないか!?」
「スパナ?」と凛久。
「ボルト外すやつだ。」
「はい!」
「急げ!!」
「はい!!」
スパナを探す凛久。
「ありません!」
辺りを見渡す若葉は、落ちているスパナを見つけた。
「待って!あります!」
スパナを手に取ると、若葉はボルトを外し始める。
「誰にもやらないこと、誰かがやらなきゃいけないんですよね!
 ・・・外れました!」
「持ち上げろ!」
「はい!!」
機械が持ち上げられ、朔太郎は英二を機械の下から引きずり出す。
「抑えろ!」
「はい!!」
ズボンを切り拓くと、ぱっくりと割れた傷口が。
「・・・デッキ上がって縫合する!」

デッキ
「消毒!急いで。」
「はい。」
傷の痛みに叫び声を挙げる英二。
「釣り針。急いで。」
「はい!」
「しっかり抑えて。傷口拭いて。
 ちょっとチクっとするぞ。」
痛みを必死にこらえる英二。
「しっかり抑えろ!」
「・・先生は、縫い物得意なんですか?」
「まあな。」
「俺・・妹のボタン、直そうとして、
 背中ごとくっつけちゃって。」
英二の話に微笑む朔太郎。
「もっと・・上手くやれると思ったのにな・・」
「上手くやったさ。お前は上手くやった。」
「そうかな・・」
「あの子たちの目みりゃわかる。」
「ユウカ・・リョウタ・・。」
英二は心配そうに自分を見つめる妹弟を見つめる。
「あの目は、お前を信じている目だよ。」
「・・・」
「お前もあの子たち信じろ。
 自分を信じろ。
 自分を信じられるようになった時、
 その時、あの子たちを迎えにいけばいい。」
「預けろって・・ことですか?」
「あの子たちはお前が思っているほど弱い子じゃない。
 ちゃんとお前のこと見てるぞ。
 泣かないで、お前のこと見てる。」
「・・・」
「世界には、そうやって涙をこらえてる子は沢山いる。
 なあ川辺。
 一人で頑張ってるのはお前一人じゃない。
 お前みたいにがんばっている人は、世界にも大勢いる。
 一人一人だけど、一人じゃない。」
「・・・」
「一人一人離れてても、決して一人じゃない。」
英二の瞳から涙がこぼれる。
「ユウカ!リョウタ!
 お兄ちゃん大丈夫だ。大丈夫だからな!」
「うん!!」
「・・・あ!」と朔太郎。
「何ですか、あって。」と凛久。
「うっそー!
 よし、出来た!」
「なんだ・・」ほっとする一同。
朔太郎は英二に温かく微笑みかけ・・

その頃、大和と羽菜は凛久の店で、ユウカが出した質問に
必死に解こうとしていた。
「ねえ、もしかしてこの問題、絶対にあり得ないものを
 計算させようとしてるんじゃない?」
「うん・・だってこの計算じゃ・・ノートが宇宙になってしまうもの・・」

そこへ、洋貴から電話が入る。
「もしもし。洋貴?
 今どこ?
 ありが島!?」

「はーい。」
ありが島のフェリー待合室で仮眠を取る4人。
若葉は外に朔太郎を見つけて歩み寄る。

「あの!」
「うん?」
「あなたの写真を見ました。」
「はい?」
「戦車の前に立っている写真です。」
「・・・」
「あれ、何をしてたんですか?
 何かを、守ろうとしているように見えたんですけど。」
「・・・」
「何ですか?何を守ろうとしてたんですか?」
「花だよ。」
「え?」
「花壇。」
朔太郎はそう言い写真を見せる。
「生徒たちが作った花壇。」
「・・・ありがとうと言うと、海を渡る魚になれた気がする。
 ありがとうと言うと、空を飛ぶ鳥になれた気がする。
 ・・・なんて言うんですか?」
「うん?」
「その・・あなたが先生をしていた国では、
 何て言うんですか?ありがとう・・」
「マハドゥサニ。」
「・・・」
「マハドゥサニ。」
そう言い立ち去ろうとする朔太郎。
「・・・櫻井先生!」
「うん?」
「マハドゥサニ!」
「・・・」
「マハドゥサニ!」
二人は見つめあい、そして微笑みあい・・。

※一部公式HPあらすじを引用しました。


英二は頑張りすぎてしまっていたんですね。
妹たちを全部一人で面倒見なくちゃいけないと。
このまま兄妹たちを引き離してしまったら、
英二はいつか後悔する。
そう思ったからこそ、朔太郎は動いた。
「上手くやったさ。お前は上手くやった。」
英二を褒めてあげたかった。
そして英二に、妹も弟も英二のことを信じて待つ強さが
あることを気づかせたかったんですね。

朔太郎の過去が明かされました。
エリート商社マンだった彼は、滞在先のアフリカで少年と出会い、
学ぶことの本当の意味を教わった朔太郎は
それまでの全てを捨てて教師になった。
そして・・アミーンの死にカメラを向ける日本の学生。
人の死に平気でカメラを向ける日本の学生。
死という意味がよく実感できないからなのか。

「日本の子どもたちは今、
 世界中のどんな子どもたちよりも、哀れなのかも」

そして、彼は日本へ帰って来た。
子どもたちを守るために。
大切なことを教えるために。

学ぶことの大切さ、面白さ。
ユウカの、羽菜と大和への素朴な疑問、
「お兄ちゃんたち変だね。
 何かわからないものを計算しているの?」
この言葉も、アミーンの言葉に似たものを感じます。
その言葉を受けて一生懸命答えを出そうとする大和と羽菜も
良かったです。
いい大学に入るために必死に勉強をする生徒たち。
多分、昔の朔太郎もそうだったのでしょう。

あの写真は子どもたちが育てた花を守ろうとしている写真でした。
そう言えば第2話で、
「俺がここに来る前にいたとこじゃ、花に値段なんてなかった。
 花はただ、そこに咲いているものです。
 買ったり、・・売ったりするものじゃなかった。」
というセリフがありました。

それにしても彼の経歴書がすごい!
MBAを取り、英語・フランス語・中国語が堪能で、
スペイン語・ドイツ語も日常会話なら出来てしまう。

今回の医療行為は、そうしなければ英二の命に関わることなので
仕方なかったとはいえ、ちょっとやりすぎ!?
『コード・ブルー』第5話でのクシ刺しになった青年をその場で
オペする状況も過酷でしたが、こちらは素人。
普通の精神力じゃ絶対に開いた傷口を縫い合わせるなんて無理!!
それだけ朔太郎はすごい人物なのだということを
描きたかったのでしょう。
一番気になったのは、あの状態で船員の人たちが救急車を呼んだだけで
放ったらかし、というのが不自然で、残念でした。




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櫻井朔太郎語録

第一話
「あがけ。
 あがくことで見えてくるものがある。
 たとえいつか敗れても、たとえ夢が叶わなくても、
 あがけばあがいた分だけ、ここ(心)に残る。
 ここ(心)に残せ。
 全力で青春の絵を描け。
 それはお前の人生で、一番の味方になるから。」
「金持ってりゃ勝ちか?なきゃ負けか?
 違うよ。
 人に勝つってのは勝つことじゃない。
 自分に勝ったやつ、自分の目標に届いたやつが勝ったやつなんだ。」
「減らないことなんてないぞ。
 わざと負けたり、嫌なことすれば、心が減るんだ。
 何やったって、絶対に譲っちゃいけないことがある。
 絶対に守んなきゃいけないものがある。
 それは、・・・誇りだよ。
 自分自身に胸を張れるってことだよ。
 金や地位じゃない。
 人の目やルールじゃない。
 上司でも教師でも誰でもない。
 自分の胸に問いかけるんだ。
 僕はこれでいいのか。
 僕は正しいのか。
 僕は今、胸を張って生きてるか。
 この胸だけが、生きてくうえでの道しるべになるんだから。
 ・・・未来は、まだ何も決まってなんかいない。
 お前たちはどこだって行ける。
 お前たちの未来を決め付けるヤツがいたら、
 そいつは、ぶっ飛ばしちゃえ。
 お前たちの未来はまだ真っ白なままだ。
 どこだって好きなところへ行ける。」

第二話
「俺がここに来る前にいたとこじゃ、花に値段なんてなかった。
 花はただ、そこに咲いているものです。
 買ったり、・・売ったりするものじゃなかった。
 彼女だって、はじめはただそこに咲いている花だったんです。
 誰かが水をやらなきゃ、枯れてしまう。」
「バカでいいじゃない。
 本気の気持ちっていうのは、バカになるってことだよ。
 駆け引きも見返りも、カッコつけたり計算したりもない。
 ただ、まっすぐぶつかっていく。
 本気で好きになるっていうのは、バカになるってことだよ。」

第三話
「逃げてるやつには居場所作ってやんなきゃ。
 追いつめちゃダメなの!」
「世界には、そうやって涙をこらえてる子は沢山いる。
 なあ川辺。
 一人で頑張ってるのはお前一人じゃない。
 お前みたいにがんばっている人は、世界にも大勢いる。
 一人一人だけど、一人じゃない。
 一人一人離れてても、決して一人じゃない。」
「僕は不幸だと言われる子供たちを大勢知ってます。
 だけどある意味で、日本の子どもたちは今、
 世界中のどんな子どもたちよりも、哀れなのかもしれません。」


アミーンの言葉
『僕は多分、一生この国から出られない。 
 だけど、海の向こうの言葉を知っている。
 僕は多分、この国で死ぬだろう。
 だけど、海の向こうの言葉を知っている。
 ありがとうと言うと、海を渡る魚になれた気がする。
 ありがとうと言うと、空を飛ぶ鳥になれた気がする。』
第四話
「子供の頃にはなかった線。
 大人になると、知らず知らずのうちに引いてしまう線。
 それに気づいて、飛び出したいって思うことっだってある。
 ジャンプしてみたいって思うことだってある。」
「立ち向かうやつだけが偉いわけじゃないよ。
 自分や他人を傷つけてまで、戦うことは偉くもなんともない。
 だけど、逃げちゃいけない時もある。
 例えばそれは、自分自身の可能性みたいなものだ。
 生きることは、自分の限界を決めることじゃない。
 可能性を信じることだよ。
 生きることは、自分の地図を作ることじゃない。
 地図の外へと、もっと、もっと向こうへと、
 生きることは、はみ出していることだ。
 ここじゃない。
 どこかへと、はみ出してることだ。」

不可なものを除外していて、残ったものをいかにありそうにそれが真相でござる―柯南道尔
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